馬場雄大

前回W杯、東京五輪の全敗を経て「やっと勝てました。言葉が出ないです」

FIBAワールドカップ2023、グループリーグ2試合目で日本代表は、フィンランド代表に98-88で勝利。FIBA世界大会では実に17年ぶりの1勝を欧州の強豪からつかみとる、歴史的な快挙を成し遂げた。

勝利が決まった後、日本代表のメンバーはそれぞれが感情を爆発させたが、中でも歓喜の涙が止まらなかったのが馬場雄大だ。試合終了後、メディア対応を行った時も馬場は溢れるモノを抑えることができずにいた。

第一声で「やっと勝てました。言葉が出ないです。良かったです」と、馬場は喜びを噛み締めた。最大18点差を逆転できたのは、前半は11本中3本成功に留まった3ポイントシュートが後半に限れば17本中8本成功と、遂に爆発したことが大きかった、馬場はこう振り返る。「前半は悪かったところもありましたが、後半は切り替えてプレーできました。僕たちは3ポイントシュートが武器で、そこが当たってきてリズムに乗れたと思います」

3ポイントシュートが入ったのは、しっかりとペイントタッチができたことも大きい。実際、この試合の日本は2点シュートが30本、3ポイントシュートが28本の試投数と理想的な内訳だった。「やっぱり3ポイントシュートだけだとオフェンスのバランスが悪いです。ペイントアタックは普段から意識しているところで、それを少しずつ本番の大舞台で体現できていて、自分たちの強みになってきたと思います」

また、忘れてはならないのは自分たちよりサイズのあるフィンランドを相手に、最後まで集中力を切らさずにハードワークで戦い続けたことだ。「もう、気持ちです。みんなが勝ちたいって気持ちをずっと出せていました」

馬場雄大

「雄太も万全ではない状況だったので、自分がやるしかないと思いました」

馬場個人でいえば、オフェンスでは5得点とインパクトを与えることができなかった。ただ、持ち味の身体能力を生かしたディフェンスで、スタッツに残らない奮闘ぶりが光った。「オフェンスでリズムがつかめない中、ディフェンスで貢献しようと。得点を取ることがすべてではないですし、守備で頑張れる時もあります。(渡邊)雄太も万全ではない状況だったので、経験がある分、自分がやるしかないと思いました」

このように馬場は語った。そして、彼の貢献度がどれだけ高かったかは、出場時の得失点を示す±の数値でチームトップの18だったことが証明している。

ワールドカップ2019、東京五輪でも馬場は代表の中心を担っていた。だからこそ、この2大会での8戦全敗にはこれ以上ない悔しさを味わっており、それが今回のうれし涙へと繋がった。「前回のワールドカップ、2021年東京五輪で本当に悔しい思いをしました。やっと世界大会で1勝する事ができました。本当にチームで勝ったと思っています」

そして馬場は、この試合で大暴れした河村勇輝、富永啓生など新しい世代とともにこの快挙を成し遂げられた意義を強調する。「彼らが勝ち取ったモノですけど、本当に彼らにこの勝利を経験してもらうことができて良かったです」

そこには、この勝利を弾みとし日本代表をより上のステージへと引き上げてほしい強い思いがある。「負けるのは僕たちの世代までにしましょう。次の世代は世界で勝つのを当たり前にしていく世代だと思います。本当にここから歴史を作っていきたいと思います」

今回の快挙をさらに大きな飛躍へと発展させるためにも明日のオーストラリア戦に勝ち、2次ラウンド進出を果たしたいところだ。かつて同国のNBLメルボルン・ユナイテッドで活躍した馬場にとっては、特別な思いを抱く相手でもある。「とても楽しみにしています。(ジャック・ホワイト、クリス・ゴールディングとは)数年前、一緒にプレーしていて、ついに代表選手として対戦することになります。僕にとって重要なことです。オーストラリアは本当に質の高いチームですが、ハイテンポのバスケットボールをして勝ちたいと思います」

ちなみに海外経験豊富な馬場は、海外メディアの取材にも応じており流暢な英語で「ようやく僕たちは前に進むことができる」と語った。日本にとって今大会一番の目標であるパリ五輪の出場権獲得までこの前進を続けていくためには、馬場の攻守にわたるアグレッシブなプレーが引き続き必要だ。