ヘッドコーチ交代のティンバーウルブズ、若きライアン・サンダースが示す『変化』

2019/01/10
NBA&海外
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ティンバーウルブズ

文=神高尚 写真=Getty Images

アンドリュー・ウィギンズにエース復権の予感

開幕から勝率5割を下回り、プレーオフ圏外に位置しているティンバーウルブズは、ヘッドコーチのトム・シボドーを解雇し、ライアン・サンダースを暫定ヘッドコーチに据えました。ライアンの父親であるフィリップは2015年に病気で亡くなるまでウルブズでヘッドコーチや球団社長を務めており、わずか4年で父から子へヘッドコーチ職が巡って来たことになります。

まだ32歳と若い新人ヘッドコーチは、レイカーズ戦からわずか2日間の準備期間で迎えたサンダー戦で、これまでとは違ったウルブズの姿を見せました。

好調のサンダーがミスを連発したことで序盤にリードを奪ったものの、次第にインサイドやルーズボールの強さに手を焼くようになったこの試合、フィジカルな戦いが増えると大黒柱のカール・アンソニー・タウンズがファウルトラブルでベンチに下がらざる得なくなります。さらにトラブルは続き、第3クォーターにはデニス・シュルーダーと小競り合いを起こしたジェフ・ティーグがテクニカルファウルで退場してしまいます。

デリック・ローズとロバート・コビントンの主力2人をケガで欠く中で、試合中に発生したハプニングによりサンダースが描くゲームプランは大きく崩れたはずですが、ここで彼は落ち着いた対処を見せました。

この試合で起用した9人全員に20分以上のプレータイムを与え、また人とボールを動かすことでミスマッチになった選手を積極的に利用するオフェンスを展開。特定の選手を長時間起用して、ガードが個人技で突破することがメインだったシボドー時代とは大きく異なるオフェンスは、結果として今シーズン平均286本だったパス数を318本と大幅に増やし、サンダーのディフェンスに後手を踏ませるようになりました。新ヘッドコーチが望んだバランスの取れた形は、主力の不在を乗り越える一つの要因となりました。

それ以上に大きいインパクトは、アンドリュー・ウィギンズの大活躍でした。2015年の新人王は3年目には5試合で40点オーバーと高い得点力を発揮し、平均23.6点を稼ぐ次世代のスーパースター候補として認識されていましたが、ジミー・バトラーが加わった昨シーズンには得点が17.7点まで落ち込み、次第にチームの主役から外れていきました。

そのウィギンズが新ヘッドコーチの初戦でシーズンハイの40点を稼いだのです。その内容もアウトサイドシュートが当たったことによる偶然的なものではなく、サンダーの強力なインサイドに何度も果敢にアタックし、ディフェンスを吹き飛ばしながらダンクを決めれば、向かって行く姿勢で多くのファールをもらって18本のフリースローに繋げたものでした。

そのプレー内容を受けてか、接戦になった第4クォーター残り5分から、サンダーズはほぼすべてのオフェンスでウィギンズとタウンズのピック&ロールから始まる形を指示します。この時点でウィギンズも5ファウルとなっていましたが、エースを信じて交代させませんでした。

トレード前はバトラーばかりが担当し、トレード後もローズに任せることが多かった終盤の勝負どころを、徹底してウィギンズとタウンズに託す采配でしたが、サンダースはそのための細かい工夫も忘れません。インサイドで強いタージ・ギブソンとストレッチ役になれるダリオ・サリッチ、2人のパワーフォワードを、勝っている時はディフェンスを考えてギブソンを、負けている時はパスアウトからの3ポイントシュートを打たせるためにサリッチと、細かく交代してコートに送り出しました。残念ながらサリッチの3ポイントシュートは決まらなかったものの、最後まで冷静な采配が目立ちました。

そして残り1分1点ビハインドの場面から、ウィギンズが若い指揮官の信頼に応えて勝利をもたらします。ドライブしてのフローターは決まらなかったものの、何度もリバウンドを奪ってファウルをもらいフリースローで逆転。1点リードの場面ではタウンズのスクリーンを使って切り込み、ディフェンスが寄ってきたところでフリーになったジョシュ・オコギーに冷静にパスを出し決勝点となる3ポイントシュートをアシストしました。

ルーキーシーズンからその才能を高く評価され、結果も残してきたウィギンズは、この2年間難しい時間を過ごしてきました。それは実力でエースの座を確保できなかったとも言えますが、エースとしての自分を信じてもらえなかった時間でもありました。新たなヘッドコーチが全面的に信用してくれた初戦に40点10リバウンドと大爆発し、そして最後の場面ではルーキーのオコギーを信じてパスを出しました。

試合を通してサンダースの冷静な采配と選手への信頼が、ウィギンズを中心にチーム全体に波及していったような会心の勝利でした。自分よりも年上の選手が3人もいる珍しいヘッドコーチとともに、ウルブズはポジティブに変わっていきそうです。