ヤニス・アデトクンボ

20年も同じチームにいて、一度きりしか優勝できないのは嫌だ」

ヤニス・アデトクンボが『New York Times』のインタビューに応じた。家族への愛やバスケットボールへの情熱、ビジネスへの傾倒とともに、バックスとの再契約について慎重な発言をして注目を浴びている。

アデトクンボの契約は2026年まで残っており、最終年はプレーヤーオプション。9月22日に彼は契約延長の資格を得るが、「数字的には意味がない」と彼は言う。彼がバックスと新たな契約を結ぶ場合、サラリーキャップの35%を新契約の1年目の年俸として得ることができる。来年6月末に翌シーズンのサラリーキャップが決まるまで、契約延長する意味はほとんどない。

「来年の夏に契約を延長するのが僕とバックスにとって適切だろうね。だけど、みんなが同じ考えを共有して、家族と離れる時間を犠牲にして優勝を目指すんだと感じられなければ、契約延長はしない」とアデトクンボは言う。

ミルウォーキーという小さなフランチャイズでプレーを続けながら、バックスに絶対の忠誠を誓っていたアデトクンボのこれまでを考えると、これは衝撃的な言葉だ。

バックスは長年指揮を執ったマイク・ブーデンフォルツァーを解任し、エイドリアン・グリフィンを新たなヘッドコーチに据えた。「コーチが代わってチームがどうなるかを見てみないと。僕が優勝を目指しているのはみんな理解している。クラブも含めて同じ考えを持ち、それを僕に示してくれて、一緒に優勝を目指すと感じられれば、僕に異存はない」

「だけど、再建に入るのであれば……。僕とバックスの関係が悪くなることはあり得ない。バックスは僕のチームであり、これからもそうだ。バックスが僕を偉大な選手にしてくれて、それを世界に示してくれた。でも僕は、次の優勝を狙いたい」

2020年の12月にアデトクンボは5年で2億2800万ドル(約310億円)のスーパーマックス契約に合意している。この時点で2年連続のシーズンMVPを受賞していた彼は、今回と同じように「優勝を狙えるチームかどうかを確認したい」と話しながらも、常に残留が既定路線だった。

いくつかのチームが、アデトクンボがフリーエージェントになった時に備えてサラリーキャップを空けた。アデトクンボはそれほどまでにインパクトのある選手だ。それでも、この時のアデトクンボはすぐにバックスへの残留を決め、その8カ月に初のNBA優勝を成し遂げている。

問題はあれから数年が経過し、状況が変わりつつあることだ。今オフのバックスは、2020-21シーズンの優勝メンバーであるクリス・ミドルトンとブルック・ロペスの慰留に努めた。ドリュー・ホリデーも含め、あの時のコアメンバーは全員が残っているものの、それぞれ年齢を重ねた。ブルックは35歳、ホリデーは33歳、ミドルトンは32歳と、年齢的な衰えが見え始めてもおかしくない。そこにヘッドコーチ交代という大きな不確定要素も重なり、アデトクンボは慎重になっている。

バックスのチーム作りは明確で、アデトクンボがプレーヤーオプションを破棄すればフリーエージェントになれる2025年オフに、ホリデーとブルック、ミドルトン、ボビー・ポーティスにパット・カナートンと、アデトクンボを含めてサラリー上位の6選手が契約満了もしくはプレーヤーオプションを破棄してフリーエージェントになれる。ここまでは現体制で優勝を目指す構想が出来上がっているが、その先はいまだ何も示されていない。

年齢を考えれば、2025年以降もホリデー、ミドルトン、ブルックの体制というわけにはいかない。しかし、アデトクンボ以外は若手ばかりというチームでは彼を納得させられないだろう。これはバックスが常に抱えている問題ではあるが、アデトクンボの発言により緊急度が増すことになった。そして数年前のようにいくつかのチームが先に受け入れ態勢を整えてプレッシャーを掛けてくるだろう。

アデトクンボは今もバックスに忠誠を誓っている。しかし、彼の考えは明確だ。「ダーク・ノビツキーやコービー・ブライアント、ティム・ダンカンのように同じチームで20年を過ごしたいけど、それ以上に勝ちたいんだ。優勝が一番なのさ。20年も同じチームにいて、一度きりしか優勝できないのは嫌だ」