試合を決めた遠藤が見せた渾身の『ドヤ顔』
アルバルク東京と栃木ブレックスの第2戦は、壮絶な接戦の末に栃木が1点差で勝利を収めた。最後までどちらに転ぶか分からない試合を決めたのは遠藤祐亮だった。
栃木の2点リードで迎えた、最終クォーター残り15秒の場面。ショットクロックは残り3秒、エンドからのスローインという状況で、ゴール正面トップの位置でパスを受けた遠藤は、馬場雄大のシュートチェックをかいくぐって3ポイントシュートを沈めた。結局これが決勝点となった。
その約2分前、位置こそ右コーナーと異なるが遠藤にチャンスが回って来た際には、馬場がドンピシャのブロックショットを決めている。決まれば栃木が同点に追い付く3ポイントシュートを阻止したことでA東京が大いに盛り上がったシーンだった。それでも遠藤は「日本人じゃなかなかできないようなブロックをされたので。火がつきました」とリベンジに燃えた。
だからこそ、普段は決して好戦的ではない遠藤が、シュートを決めた直後に手で『3』を表すポーズを取りつつ、煽るようなスキップで馬場の横を通り過ぎていった。「その前にも馬場選手にスティールされたり、ダンクされたりとか、気持ち良いプレーをいっぱいされていたので。ちょっとやっちゃいましたね」と遠藤は笑顔でこのシーンを振り返った。
結果的にマークが空いて遠藤がシュートを打ったが、実は遠藤が打つようにデザインされたプレーではなかったというから驚きだ。「ライアン(ロシター)がダイブして、2点を狙うフォーメーションだったんですけど、そこにディフェンスが集中したのでたまたまです。ああいう形になったのは初めてです」
偶発的に回って来たチャンスであるにせよ、遠藤は試合を決定付ける大仕事をやってのけた。ディフェンスを強みとする選手であり、試合を決める場面でシュートを任されることは多くないが、それだけに「結果を残したことはなかったので、今日は決められて良かった。ファンも盛り上がって気持ち良かったです」と、会心の一撃を素直に喜んだ。
劣勢が続くも「どこかできっかけを作れたら行ける」
安齋竜三ヘッドコーチが「今シーズンでもベスト3に入る勝利」とコメントしたように、昨日の試合は終始A東京に試合の主導権を握られた中でつかんだ逆転勝利だった。速攻での得点は2-16と大きく水をあけられ、オフェンスリバウンドも同数(12)と、栃木の強みは封じられた。それでも勝利を手にすることができたのは、苦しい状況でも気持ちを切らさなかったからだ。
「3ポイントを決められたり、ダンクされたり、離される場面がトランジションでした。ターンオーバーをなくせば追いつけない点差ではなかったので、みんな冷静にやってました。ゾーンも効いてたし、ディフェンスも良く、相手の点数も伸びてなかったので、自分たちがどこかできっかけを作れたら行けるな、というのはありました」
詰め寄ったら突き放されるという展開を何度も繰り返し、最終クォーターのオフィシャルタイムアウトを迎えた時点で、栃木は8点のビハインドを背負っていた。届きそうで届かない展開が続き、気持ちが折れてもおかしくはない状況である。それでも、我慢し続けたことで高確率な3ポイントシュートの成功を生んだ。「ライアンのスリーが決まったり、3ポイントで流れを引き寄せる感じでした」と語る遠藤は、ロシターとともに4本ずつの3ポイントシュートを沈め、チームとしても19本中10本成功という驚異的な数字を残した。
ジェフ・ギブスがコンディション不良で欠場となり、田臥勇太も出場できず、栃木は少ない人数でのローテーションを強いられた。その中で、遠藤はチーム最長となる34分間コートに立ち続けた。「流れを引き寄せる選手が日によって違う。周りのチームは嫌だと思う」とは遠藤が説明する栃木の強さ。昨日は遠藤が主役になる日だった。A東京との強豪対決、初戦で完敗を喫した後で負けられない、プライドの懸かった一戦だけに、その働きには大きな価値があった。
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