田中大貴

文・写真=鈴木栄一

悩んだ2018年、気持ちを切り替えて好パフォーマンス

2019年最初の試合、アルバルク東京は難敵の栃木ブレックス相手に79-62と見事な勝利を挙げた。この試合、A東京はルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチが「栃木相手に勝つには、基本の2つが重要です。オフェンスリバウンド、トランジションオフェンスをいかに抑えるか。前半はこの点についてほぼ完璧でした」と振り返ったように、第1クォーターで29-9といきなり大差をつけると前半を27点リードで終える。

第3クォーターに失速し、第4クォーター途中には6点差にまで詰められたが、すぐに突き放しての快勝。結果的には前半の貯金を生かしての逃げ切り勝ちとなった。スタートダッシュの立役者となったのが田中大貴だ。第1クォーターにはピック&ロールからの外角シュートと得意のプレーから高確率でシュートを沈めて7得点。試合の流れをA東京に引き寄せる原動力となった。

「出だしでチームとして、オフェンス、ディフェンスともに約束事をしっかり守り、相手にオフェンス面でいいようにさせなかった。そこから自分たちの良い流れでオフェンスができてあのような差がついたのが、今日の試合はすべてでした」。このように田中も勝因について、指揮官と同じ意見を言う。

今シーズン開幕から2018年の間は様々な苦労があり、だからこそ田中にとっては新年を一つの契機にしたいと臨んだ一戦だった。「シーズンが始まってから2018年の間は痛めていたハムストリングの状態が良くなく、平日の水曜ゲームを欠場したり、脳震盪だったりと、なかなか良い流れになりませんでした。出場した試合でも良い形でやれなかった感じが正直なところあったので、何か変える必要があると思いました。こうやって年が新しくなることで開き直って、ここからもう一回、新しいシーズンが始まるくらいに気持ちを切り替えたのが、少しは影響しているのではないかと思います」

この悪い流れについては、「シュートタッチがシーズン始まってからあまり良くなくて、1本外してしまうと、深くは考えていないつもりですけど引きずってしまう。次も外したらと自分のパフォーマンスが良くなかったことでネガティブな方向に行きがちでした」という悩みもあった。

そこで次のようなきっかけもあり、気持ちの切り替えをして挑んだのが今日の新年一発目のゲームだった。「スタッフに頼んでヨーロッパのうまい選手、NBA選手のプレーを見させてもらうと、彼らだって見ていると結構つまらないミスもする。40分間トータルでどれだけ脅威になれるのか考えた時、自分はシュートを外しても積極的にやる必要がある。昨シーズン、自分はそういう姿勢でプレーしていたことを思い出して、今日の試合に臨みました」

田中大貴

「チャンピオンシップのつもりで戦う2日間にしよう」

幸先良い形で2019年のスタートをきった田中とA東京だが、もちろん明日の試合に向けて気の緩みはない。現在、東地区でA東京は千葉ジェッツ、栃木に次ぐ3位であり、この2連戦は切羽詰まった状況ではないせよ「自分からしたら結構差が開いていて、その差は直接対決でしか埋まらないと思います。チャンピオンシップのつもりで戦う2日間にしようと話しています」と意識している。

明日も勝って連勝するのに何よりも重要と田中が強調するのは、やはりチームの根幹であるディフェンスだ。「今日は結果としてシュートが入りました。ただ、大事なのは相手のオフェンスをストップできていたこと。前半は20点代に抑えられていました。そこが今日のポイントでした。昨シーズンに自分たちが優勝できたのはディフェンスを頑張ったから。その認識はシーズンがたつごとに良くなっていると思うので、もっとレベルアップしていきたいです」

田中が手応えを感じている守備の仕上がりをさらに高めていくためにも、2日続けて栃木の重厚なオフェンスを食い止めることができるのか。明日の試合、リベンジを期す栃木との激闘は見逃せない。そして、A東京の勝利には引き続き田中の攻守における貢献が重要となってくる。