文=鈴木健一郎 写真=本永創太

終盤の強引な攻めで詰め寄る仙台、勝負どころでミスを犯す

『オールジャパン2017』準々決勝、アルバルク東京と仙台89ERSが対戦した。Bリーグでは同じ東地区で、22勝5敗で首位を走るA東京と、8勝21敗と大きく負け越す4位の仙台。地力の差はあったが、仙台が意地を見せて終盤まで食らい付く展開となった。

立ち上がりは両チームとも重い展開。A東京は得点源のディアンテ・ギャレットに当たりが出ずリズムが作れない。仙台は速い展開に持ち込もうと積極的に仕掛けるも、気合が空回りしてシュートのミスが続く。仙台が一時は石川海斗とチリジ・ネパウエの得点で先行したが、地力に勝るA東京が逆転し、ギャレットがしなやかなドライブから得点を決めて22-17で第1クォーターを終える。

第2クォーターは互いにリズムがつかめない中、途中出場の伊藤大司、松井啓十郎が持ち味を発揮したA東京がじわじわとリードを広げていく。2桁のビハインドを背負うと苦しくなる仙台は踏ん張りを見せるが、第2クォーターのラストプレーで軽率なターンオーバーから松井の速攻を浴び、28-39と2桁の点差で前半を終えた。

後半、仙台は劣勢を覆そうと前半以上に果敢にプレーするが、前のめりになりミスが続く悪循環。対照的に落ち着いて試合を進めるA東京は田中大貴にボールを集めて効率良く得点を重ね、正中岳城とトロイ・ギレンウォーターの連続3ポイントシュートで56-36と20点差に突き放した。

65-43で第4クォーターが始まった時点では、A東京がこのまますんなり勝利するものと思われた。しかし、仙台はここから粘りを見せる。極端なまでのゾーンディフェンスでA東京のリズムを狂わせ、第4クォーター開始から8-0のラン。ウェンデル・ホワイト、佐藤文哉、志村雄彦が多少強引でも思い切り良く狙っていく3ポイントシュートを次々と決めて一気に差を詰める。

残り3分強でネパウエが5ファウルで退場となっても、仙台の勢いは衰えない。残り2分21秒、熊谷宜之がこのクォーターでチームにとって7本目となる3ポイントシュートを決め、68-76と詰め寄る。さらにはリング下までドライブで切り込んだ片岡大晴が、ファウルを受けながら無理やり放ったシュートがネットに収まり、70-76としてワンスロー。ついにA東京を射程圏内にとらえた。

だが、ここで片岡がフリースローを外して良い流れが途切れてしまう。速攻から失点を許すと、直後にはリスタートのボールを奪われて失点した上に、バスケット・カウントまで献上。先ほど外した仙台とは対照的に、A東京はギレンウォーターがこのボーナススローをしっかり決めて80-70と再びリードを2桁に広げて勝負アリ。最終スコア84-73でA東京が勝利した。

善戦にも納得しない志村「プロなら逆転しないと」

勝ったとはいえ、A東京にとってはスッキリしない展開。伊藤拓摩ヘッドコーチは終盤を「勝ちが決まりかけた瞬間に気が緩んだのは良くなかった」と語ったが、「でも、ここはトーナメントで反省している暇はないので、振り返らないです。勝ち切ったので次の川崎に向けてしっかり集中したい」と語る。

得点源のギャレットは15得点。どの相手も入念な対策を取り、以前のように好き放題には得点できなくなっている。だが伊藤ヘッドコーチは「彼を止めようとするなら、やってもらえればいい」と気にしていない。「彼なりにアシストが増えています。彼はグッドプレーヤーなのでアジャストできるし、いろんな方法でチームを勝たせてくれると思います」

ゲームハイの23得点を挙げた田中大貴は、試合が終わるとすぐに8日の準決勝へと気持ちを切り替えていた。「ハードですが、明日は身体をゆっくり休めて。個人的には疲労の蓄積はないのですが、次が大事な試合なのでしっかりと準備したい」と語る。

一方、敗れた仙台の志村雄彦は、終盤までA東京に食らい付く試合展開にも全く納得していなかった。志村に言わせれば勝敗のポイントは、6点差まで詰め寄った終盤ではなく前半にあった。「勝とうと思ったら前半にリードして、第3クォーターに耐えて、第4クォーターに力を出し切るしかないです。グッドゲームかもしれないけど、相手は力の半分も出していないと思っています。一度でも逆転していたらまだいいのですが、相手の背中が見えただけ。プロなら差を詰めるだけじゃなく逆転しないと。そのチャンスが2回3回とあったのにミスが出た。そういうところで決め切れない僕らと、決めてくる東京。あとちょっとかもしれないけど、そのちょっとが大きいです」

志村は続ける。「A東京のようなチームに対して背中が見えるところまで来たことは自信になりました。ただ、力の差は明らか。すべての面でレベルアップする必要があります」

bjリーグのチームはオールジャパンに参戦していなかったため、仙台にとっては今回が大会初参戦。旧bj勢で唯一ベスト8まで駒を進めたことは収穫だが、志村には意外な形での悔いがあった。「テレビで試合中継があるところまで行きたかったです。2年前は広島が決勝まで行きましたよね。プロクラブとしてそこまで勝って、全国の人にアピールしたかったです」。今大会は準決勝からがNHK-BSでの中継が入る。仙台は試合と同様、ここでもあと一歩及ばなかった。