篠山竜青

文=鈴木栄一 写真=野口岳彦、鈴木栄一

姉からのアドバイスを機に圧巻のパフォーマンス

川崎ブレイブサンダースは、深刻な得点力不足などシーズン序盤の苦しい時期を乗り越え、右肩上がりの状況で2018年を終えた。中でも注目すべきは篠山竜青の得点力だ。開幕直後は深刻なシューティングスランプに陥り、先発から外れる時期もあった篠山であるが、12月に入ってからは圧巻のパフォーマンスを見せている。

12月の初戦となった8日の横浜ビー・コルセアーズ戦は第1クォーターでいきなり19点リードの大差をつけ、最終的に94-55の大勝となったことで、篠山は約15分のプレータイムと温存された。よってこの試合を除外しての12月残りの9試合の成績だが、コンディション不良から控えスタートとなった21日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦を除く8試合で2桁得点を記録。28日のシーホース三河戦では29得点を稼ぐなど、この間において平均15.7得点をマーク。さらに特質すべきは3ポイントシュート成功率55%を含むフィールドゴール成功率58%という数字だ。

この好調の要因は姿勢の改善に起因するもので、それは姉の指摘によって気付いたものだと篠山は言う。「姉は小中高とバスケ選手でインターハイにも出場していて、今は柔道整復師として働いています。11月末の代表戦が終わっての横浜戦の前、姿勢についてアドバイスを受けて、そこをより意識するようになったらシュートタッチが劇的に良くなりました」

「疲れていると肩に力が入ったり、姿勢が前傾、猫背になったりしてしまうところがある。シュートが入っている時は肩の力が抜けているし、もう少し首が長く見える。そこが一つの指標になっているのではないか」というのが姉の指摘だそうだ。「それで、姿勢を良くすることをシュートの時などに心がけています。そこからの確率はかなり上がっています」と篠山は言う。

篠山竜青

「意識しているのは正しいプレーをすること」

篠山の得点面での絶好調として思い出されるのは、リーグ1年目のチャンピオンシップにおける大暴れだった。この時、セミファイナルのアルバルク東京戦での5分間の第3戦を除く、チャンピオンシップ5試合において1試合平均18.6得点、フィールドゴール成功率70.6%と驚異的な数字を残している。

この時の再来に近いものがあるかと尋ねると「あの時も自分の中で、いろいろな試行錯誤をやっていましたが、言われてみればそういう姿勢でした。確かに肩の力は抜けていたなと、何か繋がっていると思います」と言う。

当時と違うのは、好調の理由を自分自身が把握できていることへの手応えだ。「シュート確率が上がっている原因が自分の中で分かっているのは自信になります。これからもこの高い確率を維持できるんじゃないか、という楽しみな気持ちはあります」と、12月29日の年内最終戦を終えて力強く語っている。

この12月の成績は、リーグ随一のスコアリングガードである千葉の富樫勇樹と比べても遜色ないもの。とはいえ、篠山はあくまで自分の好成績はチームオフェンスによって作り出されたものであり、これで自分がより個人技で仕掛けていくような変化はないと強調する。

「意識しているのは正しいプレーをすること。得点を挙げられているのは自分が個人技ですべてをクリエイトしているのではなく、味方が守備のズレを作ってくれているからです。これからも自分が空いていたらシュートを打つし、空いている味方がいたらパスをすることを突き詰めていく。ポイントガードとしてそれを高め、シュートを高確率で決められることを示していきたい」

篠山竜青

「自分のプレーについては悔しかった」Window5

この好調を維持していくことで川崎をより高みに引き上げるのはもちろんのこと、日本代表でのメンバー争いへの生き残りにも繋げていきたいと考えている。

「Window5は、自分のプレーについては悔しかったです。それだけに空いたらシュートを打つし、そのシュートを入れられます、というアピールを続けていきたい。数字でもしっかりアピールできればまた代表に呼んでもらえると思っています」

元旦も朝9時からウエイトトレーニングを始めるという篠山は、「2019年はもっと良い年にできると感じています。チームとしてもやらなければいけないこと、これができれば勝てる、勝てないところが表面化してきました。あとはそれをやれるかどうかなので不安はないです。どれだけディフェンスの強度、リバウンド、ルーズボールに全員が集中してやれるのか、突き詰めていく2019年だと思います」と新年に向けた意気込みを語ってくれた。

新年最初の大舞台となる天皇杯の決勝ラウンド、川崎はベスト8でまず千葉ジェッツと激突する。リーグ屈指の守備力を誇る相手に、篠山がこの好調を維持して得点を決められるかは、勝敗を分ける大きな分岐点となってくるはずだ。