ジェイレン・ブラウン

自身の教育プログラムを受ける子供たちの前で契約書にサイン

ジェイレン・ブラウンとセルティックスは5年最大3億400万ドル(約410億円)のスーパーマックス契約に合意し、現地7月26日にその会見が開かれた。その冒頭でブラッド・スティーブンス球団社長は「ジェイレンはここに来た日から、成長することにフォーカスしてきた」と語る。

「その日に上手くいけば、次の日も頑張る。上手くいかなかったら、もう少し良くなるようにする。そうやってずっと一生懸命やってきた。私がコーチとして、また今の立場で本当に良かったと思うことの一つが、若者が成長し、夢を実現するために努力する姿を見られることだ。ジェイレンは常に、今日という日をベストなものにするために自分の姿勢を貫くことができる。多くの人々の見本なんだ」

ブラウンは「僕はプレッシャーから逃げない。何を期待されていて、そのためにどれだけ頑張らなきゃいけないかは分かっているつもりだ。自分を高める挑戦はこれからもずっと続いていく。誰もまだ僕のベストを見たことはないんだ」と言う。

ブラウンは一般的なNBAプレーヤーとは少々異なる。学ぶことに貪欲で、社会貢献活動に熱心で、バスケもその一部としてとらえている。彼は「脳の働きが他の人とは少し違うかもしれないね」とそれを認め、大型契約がまとまった次の瞬間に「コミュニティにどれだけ投資して、何を築くことができるか、何を変えられるか、何人の人たちの人生に影響を与えられるか……そして今、自分が何をすべきかを考えた」と明かしている。

通常、この手の会見はクラブオフィスか練習場、もしくはアリーナの会見場で行われる。だが今回、ブラウンはMIT(マサチューセッツ工科大学)などと協力して進めている教育プロジェクト『ブリッジ・プログラム』の現場で会見を行った。『ブリッジ・プログラム』は肌の色やジェンダーによる差別のない教育を目指すもの。ブラウン自身、バスケ選手として名声を得るより前の時期に人種差別により本来あるべき教育の機会を得られず、それを勝ち取るまでに様々な苦労をした経験があり、この現実を変えたいと推進しているものだ。ブラウンはこのプログラムに参加する子供たちを呼び寄せ、彼らの前でNBA史上初の3億ドルプレーヤーとなる契約書にサインした。

「お金がすべてじゃないけど、何をするにもリソースは必要だ」とブラウンは言う。「正直、今はプレッシャーを感じているよ。この天文学的な金額が使える以上は、何か記念碑となるようなものを築かなければならないとね。でも、その取り組みができることにワクワクしている。毎晩コートに出てプレーすること、こういった活動の顔になり、声なき人々を代弁すること。それが僕の人生、僕の思考に目的を与えてくれる。この街とこの組織を代表することに興奮している」

セルティックスのレジェンドであるビル・ラッセルを始め、多くの先人がプロアスリートがその地位を生かして社会をより良いものへと変えてきた。ブラウンは「道を切り開いてくれた人々に感謝したい。今、世界は変わりつつある。僕はその変化の一端を担うことを誇りに思っている」と語る。

もちろん、セルティックスの一員としてコート上で勝利をつかむことも最優先の目標の一つだ。「何人かの選手が抜けたけど、それでディフェンスのアイデンティティを失いたくはない。クリスタプス(ポルジンギス)がもたらすディフェンス面の向上に期待しているし、他の選手もやってくれると思う。それは僕やジェイソン(テイタム)から始まるべきだ。新シーズンの挑戦を始めるのが待ちきれないよ」