ダリオ・シャリッチ

ケガからの完全復活、2年前に逃した優勝をつかみ取るリベンジの機会

ウォリアーズはパワーフォワードのダリオ・シャリッチと270万ドル(約3億6000万円)の1年契約を結んだ。

フリーエージェント市場が開くとともにドレイモンド・グリーンとの再契約をまとめたウォリアーズは、あとはベテラン最低保証額しか提示できない状況で、市場の動きを注視していた。シャリッチは3年で2700万ドル(約36億円)の契約が満了を迎えたばかり。2020-21シーズンのNBAファイナルで右膝前十字靭帯断裂の重傷を負い、翌2021-22シーズンは全休。開幕前に同じ右膝の半月板修復手術を受けて臨んだ契約最終年の昨シーズンは、サンズからサンダーへの移籍を挟み、57試合に出場した。

フリーエージェント市場が開いて1週間、シャリッチはウォリアーズとの契約を選択した。おそらくは他に好条件のオファーはなかったのだろう。それであれば、もう膝のケガの影響がないことをアピールし、高度な戦術に対応できるストレッチ4としての実力を発揮できる場所として、ウォリアーズは悪くない選択肢だ。

その判断をウォリアーズは待っていた。スティーブ・カーのバスケには、プレーの幅が広くて高度な戦術を遂行できるベテランのビッグマンが欠かせない。優勝した2021-22シーズンにはオットー・ポーターJr.がこなした、必要に応じて身体を張り、適切なポジションを取ってスペースを広げ、3ポイントシュートを放ち、時にはアシストもする高度な役回り。昨シーズンはジャマイカル・グリーンとアンソニー・ラムがいたものの、カーを満足させるレベルには至らなかった。

ビッグマンの先発はアンドリュー・ウィギンズとドレイモンド・グリーンで、ベンチからはジョナサン・クミンガとケボン・ルーニーが出るが、バックアップの2人は若く、どんな試合展開にも対応できるベテランとして、フリーエージェント市場に残っていたのがシャリッチだった。

前十字靭帯断裂のケガは復帰まで約1年かかるが、本来のパフォーマンスを取り戻すにはもう1年が必要と言われる。シャリッチはケガから2年が過ぎ、まだ29歳で、ベテラン最低保障額で取れる選手としてはベストな選択肢だ。

今のウォリアーズにとってシャリッチがさらに魅力的なのは、サンズでクリス・ポールとともにプレーして、相性の良さが証明済みなことだ。当時のサンズではディアンドレ・エイトンの控えだったシャリッチは、デビン・ブッカーとエイトンを休ませる時間帯にポールとのピック&ロール、あるいはピック&ポップで良いオフェンスを展開していた。ディフェンスでも、リムプロテクト能力はエイトンが圧倒的に上でも、シャリッチには多彩なディフェンスに対応できるバスケIQがあり、そこで存在感を示していた。

シャリッチは古典的なビッグマンではないため、高さと強さで少なからず苦戦する傾向にはあるが、スモールラインナップを重視するウォリアーズでは短所より長所が発揮される機会が多くなる。ドレイモンド・グリーンがベンチに下がると、ポールとシャリッチの時間帯がやって来るはず。またクミンガやルーニーの良さを引き出しながらプレーすることも期待される。

シャリッチは2年前の夏、キャリア初のNBAファイナルに臨むも、たった2分で右膝前十字靭帯断裂の大ケガをした。そしてサンズはバックスに2勝4敗で敗れた。ケガからの完全復活を示し、あの時に逃した優勝をつかみ取る。シャリッチにとっては、またとないリベンジの機会だ。