文=アレンまりを 写真=Getty Images

WNBA最強ルーキーの加入でチームは一気にレベルアップ

女子日本代表のエース、渡嘉敷来夢が所属するシアトル・ストーム。5月のプレシーズン開始とともに、今シーズンはストームに何かが起こると、周囲の注目を一番集めているWNBAチームとなっている。

ストームは2016年ドラフトで1位指名した新星、ブリアーナ・スチュワートを迎え入れ、今までにない勢いを感じさせている。ストームにとって 去年のジュエル・ロイドに引き続き2年連続のドラフト1位指名選手獲得であり、2001年のローレン・ジャクソン、2002年のスー・バードを含めトータル4人目の「ドラフト1位指名選手」でチーム再建に期待が高まっている。

今のアメリカで最も注目されている女性スポーツ選手の一人であり、前代未聞の大学リーグ4連覇、4年連続最優秀選手の快挙を成し遂げ、ホワイトハウスに2度招待されオバマ大統領に賛賞を受ける人物、ブリアーナ・スチュワート。WNBAは彼女の話題で持ち切りと言ってもいい。メディアでは「WNBAのレブロン・ジェームズ」と評され、若手ながらも豊富な経験と身体能力の高さで開幕と同時にチームの即戦力となるとコーチ陣、チームメートからも期待がかかっている。

スチュワートの経歴や体格、モチベーションを見ると、渡嘉敷来夢と重なることが多々あることに気付かないではいられない。先月24日、ストームのトレーニングキャンプ初日を見ても、スチュワートと渡嘉敷の、長い腕をフルに伸ばし相手に覆いかぶさるようなディフェンス、また長身ながらも素早い動きをこなし練習に取り組んでいる姿がある。

渡嘉敷のシングルハンド(片手)ボールキャッチからのスチュワートへのクイックロングパス。渡嘉敷からパスを受け取ったスチュワートが3ポイントシュートを決める素晴らしい連携プレイがトレーニングキャンプのハイライトとして披露されている。このシーンからも分かるようにストームは若手の限りない成長に重点を置き、チーム編成と強化に力を注いでいる。

チーム平均年齢25.8歳と若手の多いストームだが、数名のベテランの存在が若手を育てる重要なカギとなっている。チームの柱であり、最年長のスー・バード(35歳)はブリアーナ・スチュワートと同じコネチカット大学出身。ブリアーナ自身もスーの通ってきた功績を自分も経験するだろうとWNBAデビューに意気込みを感じさせている。

ブリアーナが17歳だった大学入学当時、「大学リーグ4連覇を保証する」とブチ上げたのは有名なエピソードだが、今回のストーム入団直後のインタビューではプロの厳しさを感じてか、そういったコメントはなく、まずはチームやホームタウンであるシアトルの生活に慣れることに専念すると言っていた。スーはトレーニングキャンプ前に、若手のプレーに対する熱意と学ぶ意識の高さを感じ、「まるでスポンジのように練習内容を吸収している」と評価している。

「WNBAのレブロン・ジェームズ」ことブリアーナ・スチュワート。渡嘉敷にとってはチーム内の競争相手であり、最高の刺激を与えてくれる仲間でもある。

渡嘉敷の自信とモチベーションは最高潮に達しつつある

今、WNBAではブリアーナ一色といったところだが、渡嘉敷の活躍からも目を離せない。今年3月には日本で所属していたJX-ENEOSサンフラワーズに優勝をもたらし、自身初のオリンピック出場を決めた今、渡嘉敷の自信とモチベーションは最高潮に達しつつある。そしてストーム所属2年目の今年、前年の経験を生かしチームメートともさらに馴染みが深くなっているのは確かだ。

昨年は心配された言語の壁だが、自分の英語力が向上しているとのコメントもあり、また簡単な単語で会話を求めてくるチームメートの気遣いにも感謝しているようだ。コーチであるジェニー・ボウセックがトレーニングキャンプで重要視している「コミュニケーション」の点は昨シーズンよりさらにスムーズになるはずで、連携プレーにも幅が出てくるだろう。

日本ではあまり経験できない、自分と同じかそれ以上の長身選手とのプレー、世界ナンバーワンレベルのアメリカンバスケットボールを噛みしめて日々の成長を感じて欲しい。またそれを力にチームに貢献し、今年はWNBA優勝の快挙をぜひ狙ってもらいたい。

日米両国で渡嘉敷のコートネーム(バスケットボールコート内のニックネーム)はタク。「タク」が意味するようたくましく、また日本を託された女子バスケットボール選手としてさらなる成長をし、渡嘉敷のモットーとする自分らしいプレーをバスケットボールファンに披露してくれることに期待したい。