文=鈴木健一郎 写真=本永創太

スパングラーが豪快なプレーで穏やかな雰囲気を打ち壊す

『オールジャパン2017』男子3回戦、インターハイとウインターカップの2冠を勝ち取った福岡第一が、旧NBL王者でありBリーグで最高勝率を誇る川崎ブレイブサンダースと対戦した。

福岡第一は立ち上がりから川崎のプレッシャーにひるむことなく、ちょうど1週間前にウインターカップで優勝した『走るバスケット』を展開。迷うことなくリングにアタックする勇敢さを見せ、試合は点の取り合いに。

蔡錦鈺がウインターカップ決勝でも決めたスピンムーブからのフェイダウェイを沈めれば、その蔡に代わって入ったバム・アンゲイ ジョナサンもゴール下で粘り強く得点。第1クォーター残り1分の時点で22-27と食い下がった。ただ、最後はチームファウルが5に達し、永吉佑也の3ポイントシュートで22-32と突き放される。

激しくディフェンスしてファウルがかさむ福岡第一に対し、ほとんどファウルしない『大人の対応』で胸を貸していた川崎だが、第2クォーターに入ってコートに立ったセカンドユニットがプレッシャーを強める。ライアン・スパングラーが迫力満点のプレーで穏やかな試合の空気を打ち壊すと、ジュフ磨々道や谷口光貴が次々に得点を奪い、一気にリードを広げた。

残り2分を切って藤井祐眞が苦しい体勢からジャンプシュートを沈めて64-32とダブルスコアに。ここから福岡第一はディフェンスで踏ん張り、川崎の勢いを止めるが、押し返すには至らず、前半を64-33で終えた。

後半、川崎は引き続きセカンドユニットをプレーさせ、盤石のプレーでリードを広げていく。福岡第一も重冨周希のドライブ・レイアップ、土居光のジャンプシュートで食い下がるが、第3クォーターまではすべてのクォーターで30得点以上を許した。

井手口コーチ「一番強いチームとやれて良かった」

結局、114-67の大差で川崎が順当に勝利。福岡第一は『走るバスケット』を展開し、蔡が16得点、重冨周希が15得点と結果を出したものの、ほとんど打たせてもらえなかった3ポイントシュートが1本も決まらないなど、やりたいオフェンスができたとは言い難い。

ただ、福岡第一の井手口孝コーチは、「シュートが入りますねえ。でも前半も後半もちゃんとスタートで来てくださったので感謝です」と川崎への敬意を示し、この試合で得られた収穫を語った。

「今日は自分たちのシュート、自分たちのディフェンスをやめないで最後までやり切ることが課題でした。やってもできないかもしれないけど、10回に1回はできるかもしれない。だからとにかく挑戦しなさいと。アタックしてくれたので、点差は関係なく良かったと思います。彼らのバスケ人生の次につながるような大会にすることも目的の一つでした。今は川崎が一番強いチームではないでしょうか。そのチームとやれて良かったです」

周希と友希の『重冨ツインズ』に中国人留学生の蔡が注目されたこの代も、これで解散。井手口コーチは「私は学校の先生だからティーチングとコーチングの両方をやるのですが、このチームは先生としての教育の仕事も、バスケットの指導も腹いっぱいやらせてくれました」とこのチームを振り返る。

「ここまで来させてもらったことは、高校のコーチとしては最高です。明日試合ができる高校はないんだから、これ以上のことはないです。彼らに感謝したいです」

高校生相手に十分なケアを見せながらもパワーで圧倒した川崎。大阪エヴェッサを破ったサンロッカーズ渋谷と、明日12時から代々木第一体育館で対戦する。