ジョーダン・プール

新天地ウィザーズで、ブラッドリー・ビールの後継者になれるか

マイク・ダンリービーJr.はウォリアーズの新たなGMとしての就任会見で、ジョーダン・プールについて「あと4年はこのチームでプレーする」と宣言したが、それからたった3日でウィザーズへのトレードを決めた。

2021-22シーズンの優勝にシックスマンとして大きく貢献したプールは、昨夏に4年1億4000万ドル(約200億円)の大型契約をウォリアーズと結んでいた。ウォリアーズは『王朝』を築いた後、その全員がベテランとなったコアメンバーを軸に勝ち続けながら、世代交代も同時に進めようとしていた。当然、進捗は芳しくなかったが、そこにGリーグから這い上がったプールが、『3人目のスプラッシュ・ブラザーズ』と呼ばれるまでに成長して結果を出した。ウォリアーズは待望の『次世代のエース』誕生を喜び、大型契約を提示した。

しかし、NBAは一歩先に何が待ち受けているか分からない。プールの『輝かしい将来』は、ドレイモンド・グリーンの拳で破壊された。今シーズン開幕前の練習中にいさかいを起こし、プールはグリーンに殴打されたのだ。

この時点ではグリーンが悪役で、プールは気の毒な被害者という役回りだったが、バスケ選手の印象はコート上のパフォーマンスに大きく左右される。シーズンが始まるとグリーンは過去10年間そうだったようにディフェンスとプレーメークとリーダーシップでチームを引っ張った。プールはフィールドゴール成功率も3ポイントシュート成功率も落ち、ターンオーバーが増え、ディフェンスの弱さを相手チームに狙われるようになった。特にディフェンスで狙い撃ちにされる弊害は大きく、プレーオフの出場時間は昨シーズンの27.5分から今シーズンは21.8分へ、これにより得点も17.0から10.3へと激減した。

殴打事件の直後にプールは契約延長にサインし、「これで頭がすっきりした状態でバスケに集中できる」と語ったが、そうはいかなかった。その後の彼は殴打事件についてコメントしようとはしなかったが、グリーンが自主的な謹慎をしただけでチームが出場停止処分を下さず、トレードもしなかったことに憤慨したのは間違いない。グリーンは自分の愚行を反省していたが、シーズンが始まればロッカールームを仕切り、リーダーとして振る舞う。彼は自分の仕事をやり、チームもファンもそれを受け入れる。殴打事件がなかったかのように振る舞うチームの中で、プールがただバスケに集中できたとは考えづらい。

いずれにしてもプールはパフォーマンスを落とし、シーズンを通して不機嫌だった。レイカーズとのカンファレンスセミファイナルに敗れてウォリアーズはシーズンを終えるのだが、この第4戦で10分しかプレーしなかったプールは試合後、「プレータイムがどれだけでも、僕のやることは変わらない」とだけ話している。1年前は勝敗や自分のプレー内容にかかわらず常に前向きで饒舌だった彼は、もういなかった。

そして今回、38歳のクリス・ポールとトレードされ、再建に舵を切ったウィザーズへと放出された。しかもウォリアーズは将来の1巡目指名権も手放しており、そこには『使い物にならない選手と結んでしまった大型契約を引き取ってもらった』という意味合いを感じさせる。

プールはウィザーズからまたトレードされる可能性があるが、優勝を狙うようなチームは彼の大型契約を引き受けられないため、それがどこであれ行き先は勝てないチームであり、彼のキャリアは『3人目のスプラッシュ・ブラザーズ』から暗転することになる。しかし、彼はまだ24歳と若い。ウィザーズに残るのであれば、ブラッドリー・ビールに代わるエースとして活躍し、信頼と尊敬を勝ち取るチャンスは十分に残されている。

すべては自分次第。今こそ「僕のやることは変わらない」というメンタリティが求められる。