複数の1巡目指名権をトレードに出せるヒートが優位か

フロントを一新したウィザーズは再建の第一歩としてブラッドリー・ビールのトレードに動いている。ビールは昨年オフに5年2億5100万ドル（約340億円）のマックス契約を結んでおり、さらにトレード拒否条項があるため、彼の同意がなければトレードは成立しない。そのためウィザーズはビールのエージェントに、他のチームと交渉する許可を与えた。

昨シーズンは手首の手術で途中離脱、今シーズンもハムストリングに膝とケガが相次ぎ50試合にしか出場できなかった。それでもチームが勝てない状況で無理をしていなかった面もあり、まだ29歳で、トレードで環境が変われば気持ちも新たにプレーできるはず。得点力のあるガードとしては今もリーグトップレベルと評価される。

そのビールのトレード先として有力視されるのが、ヒートとサンズだ。どちらも優勝候補で、NBA優勝を目指すビールの希望に合う。

ヒートは2025年以外の1位指名権をすべてキープしており、これを提供できるのが強み。カイル・ラウリーとダンカン・ロビンソンに複数の1巡目指名権を加える。間もなく行われる今年のNBAドラフトの1巡目18位指名権も、再建を急ぎたいウィザーズにとっては魅力的な材料となるだろう。ウィザーズはタイラー・ヒーローを希望したが、ヒートが応じなかったために別の解決策を探っていると『The Athletic』は報じている。

サンズはヒートと違い、トレードに出せる1巡目指名権が少ない。ディアンドレ・エイトンとランドリー・シャメットという交換条件は、ヒートのオファーに劣る。それでも、ビール側がトレードで主体的に動く今回は、ビールのエージェントを務めるマーク・バーテルスタインが、サンズのジョシュ・バーテルスタインCEOの父親という関係性が強くモノを言うかもしれない。

ここで浮上するのがクリス・ポールだ。彼は契約を2年残しているが、これは現地6月28日までに1580万ドル（約21億円）の違約金を払うことで解除できる。ウィザーズはトレードでポールを獲得し、すぐに解雇することでサラリーキャップに1580万ドルしか載せず、選手に支払う年俸を大幅に削減できる。これでフリーエージェント市場に向けて動きやすい形を取ることも可能だ。

逆に、クリス・ポールのポイントガードとしての能力を素直に評価し、新たなチームの『頭脳』として使うかもしれない。ウィザーズの新たなGMとなったウィル・ドーキンスは、長らくサンダーで働いてきた。そのサンダーが再建に乗り出した2019-20シーズンに加入したのがポールで、若手中心のチームに良い基盤を作り、なおかつプレーオフへと引き上げる重要な仕事をしている。再建に入ったチームにとって難しいのは、勝利を必要とされない状況でチーム内の規律と競争心をいかに高く保つか。それを可能にするのがポールのリーダーシップだ。ポールとしてはNBA優勝の夢が遠のくことになるが、ウィザーズにとっては再建を担う重要な選手になり得る。

ポールの今後は、彼の大型契約を解除できる6月28日までに決まるだろう。そしてビールのトレードについても、6月22日のNBAドラフトより前に決着する可能性が高い。NBAファイナルが終わってわずか数日だが、来シーズンに向けて様々な動きが加速している。