「闘争心が周りでなく自分に向いているタイプだと思います」

女子日本代表チームは、6月26日からスタートする『女子アジアカップ』に向けた最終調整に入っている。ポイントガードの最年長は、卓越したゲームコントロール力を備え、東京オリンピックでの活躍が未だ記憶に新しい本橋菜子(東京羽田ヴィッキーズ)。「今できうるベストを尽くす」をモットーとし、『恩塚イズム』の体現者でもある本橋の存在と献身は、今大会も女子日本代表の大きな力となってくれそうだ。

──第二次合宿に入りました。コンディションはいかがですか?

羽田は3月末にシーズンが終わったので、1カ月ぐらいお休みをして一次合宿に入りました。二次合宿になって徐々に上がってきている感じはあります。

——熾烈な選考レース、チームにぴりぴりした雰囲気はありますか?

恩塚さん(恩塚亨ヘッドコーチ)が割とそういう感じを出してくれていて、それに選手もついていくような感じです。チームで勝つために何が必要か。何と戦わないといけないのかというところの意思統一ができてきているのかなと思います。

──ちなみに本橋選手は闘争心にあふれたタイプですか?それとも、少し引いたところで冷静に判断できるタイプでしょうか?

半々くらいです。闘争心も周りに対してというより「やるべきことを徹底的にやる」、「一個一個のプレーで妥協しない」といった感じで自分に向いているタイプかなと。一つひとつの局面で最適な正解を出すというところで戦っているととらえています。

——なるほど。数ある選択肢から最適解を導き出すのがガードの役割とは言え、簡単なことではないと思います。

今までは、ゴール下に1人目が合わせると「その人がシュートを打つだろう」ってその他の選手たちが止まっちゃうことが多かったんですけど、恩塚さんは、「世界と戦うとシュートがブロックされる可能性が高くなるから、次のもう1人、さらにもう1人と、オフェンスを成功に導くために最後までプレーしようと」と言い、その方法を細かく示してくれています。選手たちもビデオでそういった場面を細かく確認しています。

──現状、完成度はどのくらいですか?

理解度で言えば、80〜90%くらいまではいってると思うんですけど、試合のカオスな状況でそれを体現できるかというところでは60〜70%くらいなのかなというふうに思います。そこを究極まで突き詰めればメダルが取れるという方向性でやっているので、みんなで信じてやっていく必要があるのかなと思います。

本橋菜子

「ベストを尽くそうという思いは、年々強くなっています」

——昨年のワールドカップはケガ明けで、思うようなパフォーマンスを挙げられませんでした。あらためて、再びの国際大会へ向けた今の心境をお聞かせください。

目の前の一つひとつのことを全力でやり遂げよう、みたいな感じのスタンスというか。なので、去年までのことはあまり考えず、今ここで呼ばれて必要とされているんだったら自分のベストを全部出してやろうっていう感覚です。

——絶対にメンバーに残りたい、という感じではない?

今、自分にできるベストを尽くすのが自分の責任だと思っているので。メンバーに残っている限りはそれを出しますし、それで落とされるのであれば自分のレベルが達してないということなのでしょうがないかなと。東京オリンピックまでは「メンバーに入りたい」という思いが割と強かったんです。「せっかくのオリンピックなんだからがんばろう」って。ただ、ワールドカップからは代表チームが勝つために必要な選択をしてほしいなっていう思うのほうが強いかもしれません。すごく上から目線みたいですけど(笑)。ただ繰り返しになりますが、環境が与えられるならもちろん努力するし、勝つために自分が必要であれば全力でそれに貢献したいなと思います。

——そういった心境に至ったのはキャリアを重ねたことも影響しているのでしょうか?

そうですね。でも初めて代表に呼ばれた時から「ベストを尽くしてそれでも落とされたんだったらしょうがない」というスタンスではありました。とは言え、とりあえず自分のベストを尽くそうという思いは、年々強くなっていると思います。「あと何年で引退」と具体的に決めているわけではないですが、現役でいられる時間は確実に減ってきているので、とにかく1年1年を大切に過ごしていくしかないと思います。

──アジアカップは、前回出場された2019年大会(MVP)の良いイメージをお持ちだと思います。抱負をお聞かせください。

そこはもう終わったことなので、リセットして新しい気持ちでいます。ただ、パリ五輪に繋がる大会ではあるので、自覚と責任を持ってプレーしたいなと思います。

──パリ五輪に対してはどんな気持ちを持っていますか?

今は1年1年を大事にしているので、とにかく「今年1年をがんばろう」としか考えていないですね。アジアカップやOQTが終わってから考えるかなという感じです。