「僕も逆境にいる子供たちにインスピレーションを与えられる存在になりたい」
昨シーズンのナゲッツは、プレーオフファーストラウンドでウォリアーズに1勝4敗とあっけなく敗れた。しかし、今シーズンはニコラ・ヨキッチを軸とした多彩なオフェンスを武器に次々とライバルを蹴散らし、一気にNBAチャンピオンに上り詰めた。そして、この優勝劇にジャマール・マレーの完全復活があったことは間違いない。
2021年4月12日のウォリアーズ戦でマレーは左膝の前十字靭帯断裂を負い、2021-22シーズンの全休を余儀なくされた。本来のプレーを取り戻せるのか疑問視する声も少なくなかったが、今シーズンに復帰を果たすと、レギュラーシーズン65試合に出場し、平均20.0得点、6.2アシスト、4.0リバウンドを記録。プレーオフに入っても好調を維持し、カンファレンスファイナルのレイカーズ戦では5試合で平均32.5得点、5.3アシストを記録。そして、ファイナルの5試合でも平均21.4得点、10.0アシストと、世界中に完全復活を見せつけた。
キャリアの危機に瀕した大ケガから復活した1年目に、念願のNBAタイトルを獲得したマレーは「言葉に表すことは難しい。非現実的な瞬間だった」と優勝直後の気持ちを振り返った。そしてコートで行われたインタビューでは、歓喜の涙を流しながら次のように語った。「ここまで来るのに血の滲むような努力をしてきた。このコートにいる全員が僕の復活を信じてくれていた。自分も復活できると信じていたし、僕たちに疑問を持っていた人々が間違っていることを証明できた」
そしてかつて同じ左膝の前十字靭帯の大ケガを乗り越えたザック・ラビーンのサポートに感謝し、次の思いを持っていたと明かした。「失意のどん底にある時、最後に自分がどんな姿になりたいのかを思い描いていた。ザック・ラビーンはとても助けてくれた。僕たちはリハビリ中に『何をやっている?どんな感じだ?』といろいろと話した。ガロ(ダニーロ・ガリナリ)、(ビクター)オラディポ、クレイ(トンプソン)とみんながケガから復帰できることを示してくれた。僕も、逆境にいる子供たちにインスピレーションを与えられる存在になりたい」
悲願の初優勝を遂げたナゲッツだが、マレー、ニコラ・ヨキッチ、マイケル・ポーターJr.、アーロン・ゴードン、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープの先発5人は引き続き来シーズンも契約下にあるなど、今後も高い競争力をキープできる。マレーも「「僕たちは健康であれば、勝つことができる。今回は多くの優勝の内の最初だと思う」と言い、今回の優勝が王朝の始まりであると予言した。