ブルース・ブラウン

第4戦で21得点、「常に誰かがフリーになる。幸運にも僕にそれが回ってきた」

ブルース・ブラウンはNBAキャリア5年目の26歳。NBAに入る前にマイアミ大で2シーズンを過ごしており、ヒートのカセヤ・センターをホームコートにしていたわけではないが、この地には馴染みがある。そこで行われたNBAファイナル第4戦、ジャマール・マレーがダブルチームを仕掛けられ、ニコラ・ヨキッチがファウルトラブルになる状況で、彼が21得点を挙げた。勝負の第4クォーターに11得点とオフェンスを牽引したことが、勝敗に大きなインパクトをもたらしている。

それでも彼は、この活躍を自分の手柄ではなく「チームプレーの成果だよ」と語る。「ヒートはジャマールにトラップを仕掛けてボールを奪おうとしていた。二コラにも常にマークが付いている。これは言い換えれば3対2のシチュエーションで、常に誰かがフリーになる。幸運にも僕にそれが回ってきた」

「これまで積み上げてきた努力が実ったと感じている。NBAに挑戦してすぐの頃の僕は点を取ることに全く自信がなく、シュートが打てなかった。相手からすればフリーにしておける選手だった。だからこうして点を取れるとホッとするよ」

マイアミ時代の彼は高い評価を得ていたわけではない。彼は大学に入ってから、身長195cmの自分がNBAでプレーする道を模索して、スモールフォワードからポイントガードへのコンバートに取り組んだ。プレーメークとともに、自らの得点も求められるプレースタイルの変更に苦しんだ。実績がないため評価も上がらず、2018年のNBAドラフトでピストンズに指名されるも、順位は全体42位と低いものだった。

1年目から主力としてプレーし、3年目からはネッツでプレー。昨シーズンは28.5分のプレータイムで9.0得点、2.1アシスト、3ポイントシュート成功率が40%を超え、カイリー・アービングがコート内外の事情で出場しない多くの試合で彼がポイントガードを務め上げた。セルティックスにスウィープで敗れたプレーオフでもジェイソン・テイタムを守り、オフェンスでも存在感を見せていたことを考えると、ネッツが契約延長をオファーしなかったのは理解しがたい。

ナゲッツ加入が決まった直後、ブラウンは「ネッツからは、タックスは払いたくないけど僕との契約を優先すると聞いていた。でもロイス・オニールを獲得して、僕には何の連絡もなし。『そういうことか』と思った」と明かすとともに、「ナゲッツはガードとしての僕を評価してくれた。それがうれしかった」と語っている。

今シーズンのブラウンは、良い結果を残した後でも謙虚な姿勢を変えなかった。誰かに注目されなくても努力を怠らなかったことが成長に繋がったと理解しているからだ。「これは僕の人生のようなもの。大学でさえ僕を欲しいチームは多くなかった。評価されないことへの怒りは、もし何か予想外のことがあって僕がオールスターに選ばれたとしても忘れないと思う。僕はいつだって自分を証明しなきゃいけないんだ」

だから優勝に王手を掛けた今も、ブラウンには油断も慢心もない。「ヒートは素晴らしいチームだ。僕らは勝つことだけに集中して、全力で戦わなきゃいけない。大事なのはディフェンスだと思う。勝った3試合は相手を100点未満に抑えたのが勝因だからね」

それと同時に、大舞台を楽しむ気持ちも忘れてはいない。「明日の会場はものすごい雰囲気になるだろうね。ファンもいつもより早くアリーナに来ると思う。僕も待ちきれない気分だよ。会場に来てくれるファンのエネルギーを僕は取り込みたい。素晴らしい夜になることを期待している」

ブルース・ブラウンはアンダードッグの気持ちを失うことなく、目の前の戦いに集中しようとしている。そうすることで勝利は生まれ、キャリアは開かれる。再びフリーエージェントとなる今オフは昨年とは全く違う展開が待っているだろう。ただ、ブラウンがそのことを考えるのは、もう1勝を挙げてからだ。