「突然、電話がかかってきて『イシュ、君はトレードされる』と言われたこともある」
世界最高峰のバスケットボールリーグのNBAでは当然のように世界一の厳しい生存競争が繰り広げられている。スター選手を除けば何度も移籍を繰り返すのは珍しくない。それでも、ナゲッツのイシュ・スミスのキャリアは特筆すべきものだ。
7月5日に35歳となるスミスは今シーズンがNBA13年目。NBAで10シーズン以上プレーできているのは素晴らしい実績だが、スミスにとって今のナゲッツは通算13チーム目で、これはNBA最多記録となる。
2010年にドラフト外からロケッツに入団したスミスはルーキーシーズンでグリズリーズにトレードされ、その後ウォリアーズ、マジック、バックス、サンズ、サンダー、セブンティシクサーズ、ペリカンズ、ピストンズ、ウィザーズ、ホーネッツを渡り歩き、昨シーズンからナゲッツに在籍している。
そして、スミスにとっては初めてのNBAファイナルまでたどり着き、チャンピオンリング獲得まで目前と迫っている。スミスは『The Athletic』の取材で、次のようにタイトルへの想いを語っている。「優勝がすべてではない。(チャンピオンリングという)宝石を得られば、それで良いという訳ではないんだ。だけど、優勝できたら、それは素晴らしい気分だろうね」
「これまでの13年間を振り返れば、とてもチームを気に入っていたのに突然電話がかかってきて『イシュ、君はトレードされる』と言われたこともある。デトロイトでは第9シードの後、ようやく第8シードでプレーオフに出場したらミルウォーキーに叩きのめされた時もあった。そういう経験をすることで、今の状況はよりありがたいものになっている」
また、今のナゲッツにはスミス以外にも移籍を繰り返している代表格のジェフ・グリーンも在籍している。2007-08シーズンにNBA選手となった彼は、今のナゲッツが通算11チーム目だ。先日、ファイナル第3戦のアウェーゲームを前に、マイアミ近郊にあるグリーンの自宅で夕食会が開かれたことが話題となったように、スミスやグリーンは若手の指南役など、コート外でも貢献している。
今のナゲッツはジャーニーマンの献身的な働きもあって、高いチーム力を備えている。悲願のNBA初制覇まであと3勝だ。