石井講祐

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

『千葉の田口成浩』にとっては秋田で初のゲームに

秋田ノーザンハピネッツはホームに千葉ジェッツを迎えた。シーズン中盤戦になってハードワークが噛み合い、結果を出せるようになってきた秋田にとっては、優勝候補の千葉を相手にどれだけの戦いができるのか、力を試す一戦。またチームの顔だった田口成浩が千葉に移籍した後、初めて秋田に戻ってのゲームということで注目度が高く、CNAアリーナ★あきたには今シーズン最多となる4104人が詰め掛けた。

それでも立ち上がりは、こちらも秋田でかつてプレーした富樫勇樹のスピードに振り回され、連続3ポイントシュートを含む攻勢を浴びて1-8とビハインドを背負う。開始5分で登場した田口は、ファーストプレーでオフェンスリバウンドを奪うと、そのまま外に開いて中山拓哉のファウルを受けながらも3ポイントシュートを沈める。ただ、入場の際は拍手で迎え入れた秋田のファンは、ボーナススローではブーイングで圧力を掛けて、フリースローを落とさせる。第1クォーター終盤から保岡龍斗が思い切りの良い3ポイントシュートを次々に決めて、3本目を決めた第2クォーター開始2分で23-23と追い付いた。

その後はなかなか差の付かない大混戦に。立ち上がりに止められなかった富樫を自由にプレーさせず、ジャスティン・キーナンとこの日がデビュー戦のドワイト・コールビーが攻守に泥臭い働きを続けて、千葉の強力インサイドを封じる。千葉が得意とするトランジションオフェンスに対し、切り替えの時点で前から激しいプレッシャーを掛けることでミスを誘発。相手のペースを作らせずに接戦に持ち込む。

第3クォーターにはキーナンを強調した攻めで最大8点のリードを奪うが、外国籍選手を休ませる時間帯に踏ん張ることができず、またギャビン・エドワーズが自分で無理に攻めず外にボールをさばくようになると千葉の攻めが活性化。結局またクロスゲームへと持ち込まれるが、第3クォーターの最後は保岡がミドルジャンパーで締めて61-59とリードを奪う。

千葉ジェッツ

ピンチにも慌てず、相手のミスを待ち勝利した千葉

両者一歩も譲らないまま時間が経過した残り2分14秒、千葉のトレイ・ジョーンズが個人ファウル5つで退場に。コールビーとの接触は軽いもので、直前の攻めで自分への接触がコールされなかったこともありジョーンズは激高するが、判定は覆らない。再開後すぐにキーナンが石井講祐とのミスマッチを突き、続いて田口の安易なパスをスティールした保岡がそのままワンマン速攻を決めて秋田が83-81と試合をひっくり返す。

だが、ここで千葉はタイムアウトを取り、それぞれが気持ちを落ち着かせる。外国籍選手のファウルアウトはゲームを壊しかねないアクシデントだが、代わって入った石井がエドワーズからの好パスを受けて3ポイントシュートを沈め、千葉に流れを引き戻す。

逆に、秋田には土壇場でミスが出る。1点ビハインドの残り40秒、小野寺祥太が強引なドライブからファウルを誘い、貴重なフリースローを獲得。ただ、この際の接触で足を痛めてプレーを続行できず。代わって入った成田正弘が2本とも外してしまう。前半には思い切ったアタックからバスケット・カウントをもぎ取り、ボーナススローを難なく決めていた成田だったが、終盤で勝敗を左右するフリースローは別物だった。

さらにミスは続く。千葉のハーフコートバスケット、ボールハンドリングする富樫に気を取られ、右ウイングから左へと大きく回り込む石井を誰も捕まえていなかった。残り16秒、左ウイングでオープンになった石井は、余裕を持って放った3ポイントシュートを沈めて87-83と突き放す。これが決定打となり、89-86で千葉が混戦を制した。

ドワイト・コールビー

若いチームにとっては収穫となる敗戦

千葉ではエドワーズが攻守に身体を張りつつ20得点を記録。速攻からのイージーな得点がなかなか生み出せない中、富樫と西村文男の両ポイントカードがメリハリの利いたゲームコントロールを見せ、89得点と秋田ディフェンスを攻略。ともに4本の3ポイントシュートを成功させた石井と田口を軸に、試合を通して25本中13本を成功させた3ポイントシュートが大きな勝因となった。

勝負どころでチームの成熟度、個々の選手の経験の差が出た試合となったが、千葉のトランジションオフェンスをほとんど発動させなかったハードなディフェンスが機能したのは大きな収穫。ドワイト・コールビーはデビュー戦で11得点16リバウンドと守備の要となり、キーナンは36得点と攻めの核として存在感を見せた。彼ら2人の外国籍選手を中心としながらも、出場したすべての選手が個々の役割をハードに果たすことで、千葉と互角の攻防を演じた。

悔しい敗戦となったが、若いチームにとってはこれも経験。開幕からここまで積み上げてきたことが間違っていなかったと確認できた試合でもあったはず。それだけに今日の第2戦もハードワークを徹底し、なおかつ敗戦からの成長をすぐに示したいところだ。第2戦は14時05分ティップオフとなる。