ブルース・ブラウン

サイズはなくても全ポジションをこなす、リーグ屈指の便利屋

長かったシーズンの締めくくりとなるNBAファイナルは、ナゲッツとヒートの顔合わせとなりました。ポイントセンターの二コラ・ヨキッチとバム・アデバヨ、勝負強いジャマール・マレーとジミー・バトラー、チームカルチャーに沿った選手獲得、育成をベースにしたチーム作りと似た要素が多い両チームは、ベンチにキーマンが控えている点でも似ています。

東のカンファレンスファイナルは、ケイレブ・マーティンのためにあったようなシーズンでした。ジェイソン・テイタムのマークマンとして、セルティックスのスペーシングを無効化するカバーリング担当として、そしてジミー・バトラーに次ぐ得点源としてフル活用されました。

シーズンの大半をスターターとして過ごしてきたケイレブですが、ケビン・ラブの加入によりベンチスタートに回りました。本来はガードである196cmのケイレブがパワーフォワードやセンターの選手とマッチアップすることを避けるための変更でしたが、同時にケイレブがベンチに控えていることですべてのポジションで柔軟に起用することが可能になり、試合展開が苦しくなればなるほどケイレブのプレータイムが伸び、ハードワークでチームを助けることになりました。

同じくすべての選手の控えとして起用されているのがナゲッツのブルース・ブラウンで、ポイントガードのジャマール・マレーの控えが基本ながら、センターの二コラ・ヨキッチがファウルトラブルになっても登場するのはブルースです。ドライブで切り崩したかと思えばポストで中継役になり、相手のポイントガードにフルコートでプレッシャーをかけたかと思えばゴール下のヘルプもこなします。ケイレブよりもさらに小さい193cmのブルースですが、リーグ屈指の便利屋です。

マーティンもブラウンも、プレーオフに入ってからそれぞれチームの主力選手の中で最も良いディフェンスレーティングを記録しており、主たる仕事のディフェンスで貢献しているのはもちろん、オフェンスでもケイレブがフィールドゴール成功率57%の14.1得点、ブルースがフィールドゴール成功率53%の12.2得点とともに好調を維持しており、頼れるベンチメンバーの存在は苦しい状況でも粘り強い戦いに繋がっています。

ファイナルまでたどり着く道のりにおいて、前半をビハインドで終えた試合は、ナゲッツが3勝2敗、ヒートが4勝4敗と、いずれも逆転勝利が目立っています。相手のオフェンスを断ち切るため、自分たちのエースのトラブルに対処するため、様々な理由から起用されるケイレブとブルースはヘッドコーチにとっての精神安定剤のようなもの。ファイナルという大舞台でチームのピンチを救うのはケイレブか、それともブルースか。便利で働き者の2人が試合の流れを左右します。