デリック・ホワイト「その言葉が僕らを変えてくれた」
セルティックスはヒートとのカンファレンスファイナルで3連敗を喫した後、2勝を挙げた。崖っぷちから2つの快勝を収めたことで、チームを取り巻く雰囲気は変わりつつある。しかし、多くの証言をまとめると、3敗目を喫した翌日の時点で、チームミーティングでの一つの発言をきっかけにセルティックスには明確な変化があったようだ。
マーカス・スマートは「マット・レイノルズはあまり多くを語る人じゃない。でも、彼の言葉は大きかった」と言う。スマートによれば、ミーティングの時に「私からもちょっといいかな」とレイノルズが前に出てきたことに全員が驚いたそうだ。
レイノルズはセルティックスでビデオコーディネーターを務め、今はアシスタントコーチを務めている。映像を集め、編集する作業を行いながら、練習場に選手が来ればワークアウトを手伝う。ブラッド・スティーブンスがヘッドコーチを退任してフロント入りしたタイミングでコーチングスタッフの多くがセルティックスを去ったが、レイノルズは残っただけでなくアシスタントコーチに昇格した。
レイノルズは小柄な男だが、チーム内での存在感は大きい。練習場で多くの時間を選手とともに過ごし、誠実で仕事熱心であることでチームの信頼を勝ち取っている。デリック・ホワイトは言う。「彼がどれだけ仕事に打ち込んでいるかを僕らは毎日見ている。映像を集めてフィルムセッションを行い、僕らにアドバイスする。チームが勝つために必要な、すべての小さな情報を提供してくれる。だから誰もが彼を尊敬しているし、大好きなんだ」
そのレイノルズが初めてチームミーティングで発言した。その内容は「9カ月間戦ってきて、この1週間だけが悪かった。働いていれば上手くいかない週も時にはある。でもこの1週間ですべてを台無しにするのか? そうしないために、団結して戦おう」だった。発言の時間は1分にも満たなかったそうだが、チームのために労を惜しまず働く男の言葉は、選手たちに響いた。
ホワイトは「悪い1週間でシーズンを台無しにするな。その言葉が僕らを変えてくれた」と言う。
ジェイレン・ブラウンは「逆境に立たされた時こそ強い気持ちを持たなきゃいけない。あそこで僕らはお互いの目を見て『このままで終われるか』と覚悟を決めた」と語る。ジェイソン・テイタムもこう言う。「人やチームの本当の性格は、物事が上手くいっていない時に見えてくる。僕たちは状況が良くなくても、団結して物事を解決できる。困った時には左右を見ればいい。隣にいる誰かが助けてくれる、そんなチームなんだ」
スマートは「僕はこのチームに9年いるけど、彼があんなに熱く語るのは初めて見た」と言い、こう続けた。「僕らはみんな一緒に成長してきて、大人になった。このチームが勝つにはどうすればいいか、みんなで考えている。そして彼は、僕たちを助けるためにあの言葉を考え出した。僕らが必要としていた言葉だった。多くを語らなくても信念と情熱を持つ男がいて、その彼が何かを言わなきゃいけない、言わせてくれ、と行動してくれたことがうれしい。それは間違いなく、僕らを蘇らせた」
「僕らはシーズンを通して一生懸命に頑張ってきた。そして悪い1週間があったけど、これ以上悪くなるはずはない。ただお互いを信頼して戦っていれば物事は解決する。彼の言葉で、誰もがそう思えた」