ラッセル・ウェストブルック

「ただこのリーグでプレーする機会に感謝して、戦い続ける」

昨シーズンのクリッパーズはカワイ・レナードが全休し、ポール・ジョージがチームを引っ張るも力及ばず、プレーイン・トーナメントで敗退した。今シーズンはカワイが復帰し、レギュラーシーズンで52試合に出場。ベストコンディションではなかったが、シーズンを通してプレーオフを見据えて調整していた感もあり、彼がラプターズにNBA優勝のタイトルをもたらした3年前の再現が期待された。

ところが3月後半になってポール・ジョージが膝のケガで戦線離脱。懸命のリハビリを試みたが、プレーオフには間に合わなかった。そしてカワイは最初の2試合でプレーした後に膝を痛め、そのまま戻って来れなかった。カワイとジョージの『2枚看板』がいずれも不在の状況で、チームはラッセル・ウェストブルックに託された。レイカーズで2年目のシーズンを迎えていたが、チームの調子が上がらない責任を押し付けられ、シーズン途中に放出されてクリッパーズに流れ着いた、かつての『ミスター・トリプル・ダブル』であり、MVPプレーヤーだ。

34歳になったウェストブルックに、当時の力強さはない。だが、アグレッシブなプレースタイル自体は変わっておらず、勝利を求めてひたむきにプレーする姿勢も変わらなかった。戦犯扱いだったレイカーズから一転、クリッパーズで先発を任された彼は、ジョージとカワイが抜けても全力で戦い続けた。

デビン・ブッカーとクリス・ポールにケビン・デュラントが加わったサンズには太刀打ちできず、1勝を挙げるのが精一杯。それでもウェストブルックは、このプレーオフの5試合で平均38.4分プレーし、クリッパーズで最も長くコートに立った選手となり、23.6得点、7.6リバウンド、7.4アシストを記録。やれることはすべてやりきった、そんな最後だった。

試合後の会見で、彼は今シーズンをこう振り返る。「正直に言えば厳しいスタートだった。それでも、僕が僕のままでいられる環境に恵まれ、みんなに温かく迎え入れられ、コート上で戦えたのは幸せだった。結果は望んだものじゃなかったけど、アップダウンの激しいシーズンをこうして終えられることに感謝している」

レイカーズのファンとは良い関係を築けなかったし、これまで以上に多くの批判を浴びた。それでも最後まで戦い続けた彼は「ネガティブなこと、作り話が出てくるたびに、僕は物事を前向きに受け止める」と話す。

「僕は自分がどんな人間か分かっていて、僕を知る人が理解してくれているのも分かっている。だから僕はいつも顔を上げて目標を見据え、その瞬間を大切にしようとしているんだ。他の誰かと同じように、僕はミスを犯す。シュートを外したりターンオーバーをするけど、他の多くの選手にはできないことをやってきた」

「人間は誰しも間違いを犯しながら最善を尽くし、自分たちができることを成し遂げようとする。そんな中、僕を支えてくれる人には感謝しかない。支えてくれなかった人にも感謝の気持ちはある。その人たちがいなければ、僕は目標に突き進む原動力を失ってしまうから。つまり、すべての人に感謝している。こうやってシーズンを終えられたことに感謝しているんだ」

「人々に認められたらうれしいけど、そうじゃなくてもかまわない。ただこのリーグでプレーする機会に感謝して、戦い続けるだけだ。僕は世界中の多くの人に良い影響を与えたい。だから今後も前を見据えて進んでいくよ」

クリッパーズはまたしても不完全燃焼でシーズンを終えたが、ウェストブルックは批判だらけで活躍の場を失っていたレイカーズとは全く別のストーリーをここで作り出した。当然、今オフのフリーエージェント市場での注目度も変わってくる。例年以上に慌ただしいオフになりそうだが、ウェストブルックはウェストブルックらしく、この先も突き進むはずだ。