『成長期』の八村阿蓮、兄の塁を彷彿させる強烈なパフォーマンスをインカレ決勝で

『成長期』の八村阿蓮、兄の塁を彷彿させる強烈なパフォーマンスをインカレ決勝で

2018/12/16

八村阿蓮

文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

「任されたからにはやってやるぞ、という気持ちで」

インカレの男子決勝、東海大vs専修大は今日14時から、大田区総合体育館で行われる。

東海大は優勝候補の前評判に違わぬ戦いぶりでファイナルに駒を進めた。1年生ながら先発を任される八村阿蓮は、同じ立場の大倉颯太ともに思い切りの良いプレーでチームを引っ張っている。筑波大との準決勝では、接戦の第4クォーターにオフェンスリバウンドを連続で取ることで自分を勢いに乗せ、得点でも爆発。難しい試合を一気に勝利へと持っていく働きを見せた。

第3クォーター後半をベンチメンバーの上級生がエナジー全開のプレーで支えた後、第4クォーターに入ってしばらくして大倉とともに投入された場面、八村は静かに闘志を燃やしていた。「颯太と2人で出ると『任されてる感』を僕は感じます。頼むぞ、と陸さん(陸川章監督)から言われているような感覚でした。一度熱くなったところでベンチに下げられて、仲間が繋いでくれたので、静かに燃えているというか、『任されたからにはやってやるぞ』という気持ちでコートに戻りました」

1年生だから思い切りプレーすればいい。だが、八村と大倉はもう一つ上のレベルへ行く段階にある。「いつも(平岩)玄さんから言われるんですけど、颯太と僕は熱くなることが多くて、そうなると周りが見えなくなって2人だけでやっちゃうんです。そこで冷静になって周りを見ろと。それが今日の第4クォーターではうまく出せたと思います」

八村阿蓮

「去年とは比べものにならない、それぐらい変わった」

そうして頭は冷静に、ハートは熱く戦った結果、モンスターパフォーマンスで筑波大を圧倒。特にチームが攻勢を仕掛ける中、オフェンスリバウンドでセカンドチャンスをもたらす働きは効果的だった。身体を張ってリバウンドを取る中で八村自身もリズムに乗ったと言う。「スタッツは気にしないのですが、僕はリバウンドが取れている時に点数も取れてて、リバウンドからリズムをつかむタイプだと思います。今日はオフェンスリバウンドをたくさん取れて、それでリズム良くやれました」

大倉とのピック&ロールからミドルジャンパーを沈め、筑波大にタイムアウトを取らせた時。味方のシュートが落ちた瞬間にリバウンドに飛び込み、ファウルを受けながらタップで押し込んだバスケット・カウント。ビッグプレーを決めるたびに、いつもは寡黙にプレーする八村が笑みを見せた。「笑ったかどうか覚えてないですけど、乗っている感覚、気持ち良くプレーできている感覚はありました。思わず出ちゃったのかもしれません」と八村は振り返る。

恵まれた身体能力をフルに生かし、筑波大のインサイド陣を圧倒する八村は、まるで兄の八村塁のようだった。兄弟だから似ていても不思議ではないが、何の迷いなく果敢にプレーする姿はこれまでにはなかったものだ。

「集中力を切らさずにプレーすること。それは大学に入って意識していて、試合を重ねていくことで向上したと思っています」と八村は言う。昨年の12月は明成の一員としてウインターカップで優勝している。この時のパフォーマンスも高い評価を得たが、それからの1年で八村は一回りも二回りもスケールアップした。「去年のウインターカップはケガがあって100%のプレーはできていません。でも、ケガがなくて100%だったとしても比べものになりません。それぐらい変わったつもりです」と、いつもは慎重な八村の口から強気な言葉が出てくる。

八村阿蓮

兄の存在が刺激に「努力の量では負けたくはない」

兄の存在は阿蓮にとって常に刺激となっている。ベナン人の父親譲りのアスリート能力は重要な要素だが、それがなくても成功を収められるだけの努力を積み重ねたからこそ今の活躍があることを阿蓮は知っている。「塁に負けないように、とは思わないですけど、刺激は受けるし尊敬しているし、努力して結果を出していることを知っているので、自分も同じだけの努力をすれば絶対に結果が出ると思っています」

この1年で集中力を切らさずにプレーできるようになったのも、練習を積み重ねた成果だ。「試合で使うシュートを、試合と同じシチュエーションで練習しています」と八村は言う。

「ピック&ロールからショートロールしてのミドルシュート、ゴール下のフックシュート、フリースロー。それだけをスタッフに協力してもらって、ひたすら練習しています。何百本も打つとか何時間もやるわけじゃないですけど、試合と変わらない集中力でやることが大事で、他の誰もこれだけの集中力でやっていないだろう、と思うぐらい集中してやっています」

「塁に負けたくないとは思っていないです。でも……心のどこかにはその気持ちがあるのかもしれません。アメリカで塁が努力している以上、僕もここで努力しないと上には行けません。努力の量では負けたくはないです」

大学1年目のシーズンで、その努力の集大成を見せるべき舞台が今日のインカレ決勝だ。「自信はあります。今日のプレーが上出来だとか出来すぎだとか思ってなくて、もっとできるとマジで思ってます。それだけの準備もしているつもりなので、それを明日の決勝で出したいです」

「相手はオフェンスチームなので、今日みたいなディフェンスができて60点以内に抑えれば圧勝できると思います。ディフェンスとリバウンドがカギになるので、そこを自分でやるつもりで。今日から変えず、良いプレーをして勝ちたいです」

若い選手は特に、短期間で飛躍的に成長することがある。八村阿蓮は今まさにその時を迎えているのではないか。シーズンが終わるのがもったいないような気もする好調ぶり。自信たっぷりの八村は、インカレ決勝でどんなプレーを見せてくれるのだろうか。

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