ジミー・バトラー

昨年のプレーオフでは『ヤング潰し』がハマりヒートの4勝1敗に

激しい順位争いが続いた東カンファレンスですが、行きつく暇もなく、ここから1試合ですべてが決まるプレーイン・トーナメントが始まります。7位シードを賭けた対戦は、ヒートとホークスという対照的なチームが顔を合わせます。

今シーズンのヒートは失点がリーグで2番目に少なく、得点はリーグ最下位と明確にディフェンスのチームであり、加えて極端なスローペースで戦ってきました。逆にハイペースのホークスは失点が25位と多く、得点はリーグ2位で明確にオフェンスのチームです。特にクイン・スナイダーがヘッドコーチに就任してから123.6得点と得点力を増しています。勝率ではヒートが上ですが、対照的なチームカラーは一発勝負ではどう転ぶか予想もつきません。

1年前のプレーオフのファーストラウンドで両者は対戦していますが、この時はホークスが1勝しか挙げられず敗れています。ホークスはヒートのディフェンスに苦戦し、5試合中3試合で得点が100に届きませんでした。トレイ・ヤングは15.4得点、3ポイントシュート成功率18%、そして6.0のアシスト数より多い6.2ものターンオーバーを記録。ヤングを止めればホークスが機能不全になるのは誰もが想像できるのですが、実行するのは難しい。それを完璧に遂行したのが、ダブルチームを仕掛けて平面で強烈なプレッシャーを掛けるヒートのディフェンスで、この『ヤング潰し』は強烈なインパクトを残しました。

それが昨夏のデジャンテ・マレーの獲得に繋がったのですが、思い描いた補強効果は生まれず、ダブルポイントガードをどう機能させるかに悩むシーズンになりました。しかし、スナイダーが就任してからは2人の得点は減り、ガードの展開からウイングがフィニッシュする形が増え、チームの得点力が向上しています。ヤングとマレーの関係性よりも、それぞれがチームメートと絡んでいくことで徐々に機能してきています。

今回のプレーインでもヒートが『ヤング潰し』に出てくることは予想されますが、起点を増やし、ウイングへの展開から得点を生み出す形を作り上げた以上、ヤングが同じ轍を踏むわけにはいきません。ホークス目線からすると、ヤングがどれだけ自制心を持ち続け、チームメートを信用できるかが勝敗のキーポイントになります。

一方でヒートは平面のディフェンスに自信を持っているものの、インサイドの層の薄さが懸念事項となります。バム・アデバヨがコートに出ていれば問題ありませんが、シーズン終盤にケガでの欠場もあり、どこまでハードワークを貫き通せるのか、スタミナ面の不安があります。ベンチメンバーだとスピード面で問題があり『ヤング潰し』を実行するのは難しくなるだけに、選手交代のタイミングは重要になりそうです。

逆に軟弱なホークスのディフェンスが相手ならば、問題なく点が取れそうなのですが、ここに今シーズンのヒートが抱える悩みがあります。シュータータイプの選手を揃えながら3ポイントシュートの成功率が上がらず、特にワイドオープンの成功率は昨シーズンのリーグ4位からリーグ25位とランクダウンし、チャンスに決めきれません。

足りない得点力をジミー・バトラーの勝負強さで補って勝ちきることも多いので、苦しい展開でも我慢強く戦えば勝てると考えているはずです。ヤングが我慢してチームメートを生かす役割に徹するのか、それともヒートがシュートに当たりが来るまで粘るのか。ここはポストシーズンらしいメンタリティのせめぎ合いとなります。

総合力ではヒートに分があるものの、フィニッシュの精度を欠くだけに、『ヤング潰し』さえ避ければホークスの得点力が上回る展開もありそうです。ホークスは今シーズンを通じてこの『ヤング潰し』へのアンサーを求めてきただけに、ここで1年前との違いを明確に示したいところ。ヒートは試合序盤から策を講じてくるでしょうが、ホークスが跳ね返してアドバンテージを持てるかが注目されます。