ケレム・カンター

23点差の完勝で群馬と宇都宮に勝率で並んだ秋田

3月25日、群馬クレインサンダーズvs秋田ノーザンハピネッツの第1戦が開催された。前節を終えた時点で群馬が23勝20敗(東地区3位)、秋田が22勝21敗(東地区4位)と、わずか1ゲーム差で順位争いをする直接対決となったが、結果は99-76で秋田が大勝し勝率で並んだ。

序盤から並里成を起点に得点を重ねる群馬に対して、秋田は長谷川暢が積極的なペイントアタックを見せる。群馬が先行するかに見えたが、秋田がターンオーバーを奪ってからの得点など簡単に流れを渡さない展開に。次第に群馬は秋田の激しいディフェンスの前にオフェンスで起点が作れずタフショットを連発してしまう。その間、秋田はフリースローで加点して逆転し、クォーターの最後には川島勇人のブザービーターも飛び出した。

第2クォーターは出だしから点の取り合いとなった。群馬がセットプレーからうまくワイドオープンを作り出して得点していけば、秋田もピック&ロールからの展開で中と外をうまく使い分けて得点を伸ばす。しかし、群馬が再び秋田のディフェンスに阻まれ得点が止まる時間帯が増えると、秋田は得意のパッシングバスケで3ポイントシュートを成功させてリードを広げた。中でもケレム・カンターが3本の3ポイントシュートを決め、このクォーターだけで14得点の活躍を見せたことで、47-39と秋田がリードして前半を終える。

後半も出だしから、秋田がオフボールスクリーンを多用したセットプレーやファストブレイクで11連続得点を挙げてリードを拡大。群馬も負けじとトレイ・ジョーンズの個の強さで対抗するが、流れを持ってくるまでに至らない。その後、攻守が目まぐるしく替わるトランジションゲームとなるが、秋田がリードを保ったままゲームは進み、秋田の72-60で第4クォーターを迎えた。

最終クォーターも、絶好調のカンターがフリースローを続けて獲得し秋田がリードを広げていった。活路が見出せない群馬は残り6分21秒で先発選手に戻しカムバックを図るが、秋田が最後まで付け入る隙を与えず、盤石のバスケを展開して99-76で勝利を飾った。

ケレム・カンター

日本で苦しんだカンター「残りの試合で自分のすべてをコートで出していく」

この試合で3ポイントシュートを6本中5本成功させて32得点とBリーグでのキャリアハイを記録したカンターだが、今シーズンのスタッツは平均8.8得点、6.2リバウンド、1.4アシストと決して活躍していると言える数字を残していない。ケビン・ブラスウェルヘッドコーチ代行も「彼は苦しいシーズンを送っています。7試合目でケガをしてしまって2カ月間試合に出られず、そこから自分のリズムをつかめずにここまで来てしまいました。」と振り返るように、本来の姿ではないと評価した。

かつてはバスケ強豪国のリトアニアリーグで得点王やリバウンド王に輝いた実績を誇るが、今シーズンは18分32秒と外国籍選手としては短い出場時間に収まっていた。ブラスウェルヘッドコーチ代行は「素晴らしいキャリアを積んでいる選手ですが、初めてのスランプだったのでコーチ陣は彼のことを気にかけています」と話し、カンターのために「プレシーズンや開幕序盤は素晴らしいプレーをしていたため、昨晩にその試合を見せて、秋田に来てどのようなプレーをしていたか思い出してもらうようにしました」と、この日の活躍の裏側を語った。

そのコーチとのやりとりに対してカンターは「映像を見て自分のパフォーマンスが上がったというよりも、コーチたちが気にかけてくれて自分のことをあきらめていないことが自信になりました」と振り返り、「今シーズンは苦しんでいて、チームに迷惑をかけているという気持ちもあったので、今日のように活躍してチームの勝利に貢献できたことでホッとしています」とチームの勝利に笑顔を見せた。

さらにチームメートへの想いもあった。ここまで日本人チームトップの平均12.5得点を挙げている古川孝敏が前節の宇都宮ブレックス戦で負傷し、右大腿二頭筋肉離れと診断され離脱を余儀なくされ、この試合は欠場となった。カンターは「古川選手が欠場する状況で、誰かがステップアップして穴を埋めないといけませんでした。自分だけでなく他の選手も同じ立場だったと思いますが、ヘッドコーチ代行も自分を信じて使い続けてくれました。ピンチでもありましたがチャンスでもある中で、特にオフェンスではアグレッシブに行こうと思っていました」と苦しい状況でもチームの必勝を期する想いを話した。

ここまで日本でのキャリアは思っていた通りではないカンターだが、この活躍を今後に繋げたいと決意を表した。「今日の試合が自分のパフォーマンスを上げるきっかけになってくれればと思います。私がこのチームにいる理由は、これまでのキャリアで積み上げてきたことがチームスタイルに合うということだと思うので、その期待に応えられるようにしていきます。これからもベンチスタートになると思いますが、コートに立った時にはオフェンスをアグレッシブにやっていきたいですし、残り16試合と少なくなってきましたが、自分のすべてをコートで出していきます」

この勝利で秋田は群馬と宇都宮と勝率で並び、まだ順位を上げられる可能性を十分に残している。チームのステップアップにはカンターの復調が直結するため、彼自身の真価を証明する活躍を今後も期待したい。