ジャスティン・コブス

前半は互角も第3クォーターに32-17のビッグクォーターを作り出す

アルバルク東京が3月25日、ホームでレバンガ北海道と対戦。ジャスティン・コブスが24分32秒の出場で30得点5アシストと爆発し、後半に攻守の遂行力で圧倒したA東京が88-65で快勝した。戦線離脱中の田中大貴、小酒部泰暉に加え、この試合はライアン・ロシターも欠場と満身創痍の中、総合力の高さを見せたA東京はホームでの連勝を19に伸ばしている。

A東京は試合の出だしからコブスが積極的に仕掛け、前半だけで18得点をマーク。だが、寺園脩斗を筆頭に北海道のガード陣のアタックに苦戦した。さらにビッグマンのショーン・ロングに内と外からバランス良くシュートを決められ、19-23と先手を取られる。それでも第2クォーターに入ると、北海道のインサイドゲームにしっかりと対応し、粘り強いカバーディフェンスで北海道のシューター陣をオープンにさせず。ディフェンスからリズムをつかんだA東京が36-33と逆転した。

後半に入ってもA東京の流れが続く。引き続きコブスを軸にアグレッシブに仕掛けていくことで、北海道のファウルトラブルを誘発。この結果、残り5分で北海道のチームファウルは早くも5つに達し、このクォーターだけでフリースローを10本(8本成功)獲得した。また、アレックス・カークを軸にオフェンスリバウンドを次々と取ることで分厚いオフェンスを展開。守っては北海道の5ターンオーバーが示すように強度を高めてタフショットを打たせるなど攻守で圧倒し、31-17のビッグクォーターを作り出す。これで一気に突き放したA東京は、第4クォーターに入っても主導権を握り続け楽々と逃げ切った。

A東京のデイニアス・アドマイティスヘッドコーチは、堅守を一番の勝因に挙げる。「前半と後半におけるディフェンスの集中力の差がすべてを物語っていると思います。前半は1対1からかなりドライブで破られたり、オフェンスリバウンドを取られた印象です。それが後半は1つか2つのミス以外は、ほぼパーフェクトに近い形で北海道さんを抑えることができました」

また、オフェンス面では水曜ゲームで単発のアウトサイドシュートが続いた点を「今日はとてもバランスが良かったです」と改善できた。「意図するオフェンスでしっかり得点が取れました。コブス選手を中心に、外だけでなく中に一旦ボールが入ってインサイドからアウトサイドへのパスで組み立てたオフェンスで決め切ることができました」

ジャスティン・コブス

「良いスクリーンをかけてくれた結果ズレができ、良い形でオフェンスができました」

このバランスの取れたオフェンスを遂行できた立役者はもちろんコブスだ。フィールドゴール18本中11本成功、フリスロー7本中7本成功と高確率でシュートを沈め、Bリーグでは自己最多となる30得点の大暴れだった。

「第1クォーターのディフェンスでかなり緩く入ってしまったのは反省点です。ただし、後半は徐々に自分たちのディフェンスがしっかり表現できました。ディフェンスのギアが入ることで、試合の主導権を握ることができました」

指揮官と同じくディフェンスがもたらした勝利と振り返るコブスは、自身のハイパフォーマンスについて「アレックス(カーク)、セバス(サイズ)が良いスクリーンをかけてくれた結果、ズレができ、非常に良い形でオフェンスができました」と何よりもチームメートに感謝する。

その上で、北海道ディフェンスの戦術の隙を突いた結果だと続ける。「いつもより意識して得点を狙いに行った訳ではなかったです。ただ、相手のビッグマンが、かなり下がって守っていました。ここ数年、自分に対して今日ほどビッグマンが下がることはなかった。そのスペースを突いて確率良くシュートを決めることができました」

「相手がこのような守備戦術をするのであれば、僕だけでなく他のガード、ウイングの選手も躊躇なく打っていけとヘッドコーチに言われています。積極的に打っていき、良いリズムで決めることで今日の得点になったと思います」

実際、今日のコブスは計18本もシュートを放ちながら3ポイントシュートの試投数は1本のみと、徹底してミドルレンジのジャンパーを決め続けた。現代バスケットボールは得点効率の面からゴール下のシュート、もしくは3ポイントシュートが推奨され、ミドルシュートは敬遠されがちだ。だからこそ北海道のディフェンスは、A東京がサイズ、カークの強力インサイド陣がいることを加味しても、トレンドに沿った合理的な選択と言える。

だが、中には定説を覆す決定力を持っている選手もいるからこそ、バスケットボールは面白い。そしてコブスもその1人であり、次のように矜持を見せる。「バスケットボールは昔と変わっていて、今はミドルレンジが最も効率が悪いと言われています。そのため、そこからシュートを打たせてOKというコーチも中にはいます。ただ、僕はキャリアを通してミドルから決めてきました」

コブスといえば、これまでも非凡な得点力を見せてはいたが、同時にゲームメークに優れた堅実な印象の方が強かった。だが、シュートチャンスを簡単に与えれば大爆発し、ミドルシュートが非効率とは限らないことをコブスはこの試合で証明した。