マティース・サイブル

3年半を過ごしたフィラデルフィアを離れ、トレイルブレイザーズに移籍

NBAキャリア4年目を迎えているマティース・サイブルは、先月にトレイルブレイザーズへとトレードされた。シクサーズでは3年半を過ごし、ルーキーイヤーから守備のスペシャリストとして活躍。それでもジェームズ・ハーデンを皮切りに『旧ロケッツ派』が多数加わったチームでは出場機会が限られ、この先のキャリアを考えればブレイザーズへの移籍は彼にとってメリットが大きかった。

ブレイザーズでのサイブルは、加入後の10試合すべてで先発を任され、プレータイムが12.1分から30.4分へと激増。シクサーズでは『守備のスペシャリスト』と見なされていたが、ブレイザーズでは積極的にシュートを放っており、得点も2.7から7.5へ伸びた。

シクサーズのダリル・モーリーGMはサイブルのオフェンス力のなさを指摘し「彼は良い選手だが、チームにオフェンスが欠けている状況で彼を留めてはおけない」とトレードを説明している。しかし、ブレイザーズを率いるチャウンシー・ビラップスは「シュートが安定しない面はあるが、練習すればいいだけのこと。ティセ(サイブルのニックネーム)は情熱があり常に前向きで、チームの良いアクセントになっている」と高い評価を与えている。

サイブルは言う。「あれだけタレントが多いチームでは、一つの失敗ですべてを失うように感じてしまう難しさがある。理由が何であれ僕はローテーションから外れ、自分の力を発揮する場を失った。でも、今ならチャンスはいくらでもあるし、思い切ってやってみろと励まされている。フロントからコーチ陣、チームメートまで、本当に温かく僕を迎え入れてくれた。すごく居心地が良いし、楽しくプレーさせてもらっている」

ただ、サイブルはシクサーズとフィラデルフィアが大好きで、その気持ちに変化はない。サイブルはトレードについて、ドック・リバースから最初に電話で伝えられた後、「ここを歩くのはこれで最後か」という気持ちで街を歩き回ったそうだ。そしてフィラデルフィアで過ごす最後の夜には、壁に自分のイラストが描かれているバーに立ち寄り、自身のサインとともに「Thank you」と書いた。

この壁画はサイブルとフィラデルフィア市、『レッドブル』によるコラボレーションで、彼が活躍するたびに地元の子供たちのためのバスケットボールコート整備のための寄付金が集まるもの。サイブルと地元の結び付きの強さを示す企画だった。

後にそのイラストは何者かによって汚され、今では消されてしまったが、サイブルとフィラデルフィアとの繋がりは残っている。サイブルは言う。「残念だけど、あそこでの僕のキャリアと同じように、すべての物事には終わりがある。すべてが新しいものに変わっていくんだ。でも、あそこに自分を描いた壁画があったと考えるだけで、僕はワクワクした気持ちを取り戻せる。僕を応援してくれた人たちへの感謝が、あの壁画へのサインだった。クールな去り方だったと思うよ」

そして現地3月10日、サイブルは相手チームの選手としてウェルズ・ファーゴ・センターに戻り、シクサーズと対戦した。19分の出場で5得点2リバウンド1アシスト1スティール。コートにいた間の得失点差+14はブレイザーズの選手で最も良い数字だ。

ジョエル・エンビードのゲームウィナーで、ラスト1秒で初めてのリードを奪ったシクサーズが、大逆転の末に120-119の勝利を収めた。結果は残念なものとなったが、サイブルにとってはかつての仲間やファンと再開し、愛情を確認し、新天地での自分の成長を見せる良い機会となった。

「ビジターチームのロッカールームを使うことから奇妙な感じだったけど、楽しもうとした」とサイブルは語っている。「僕はここでプロであること、大人であることが何かを学んだ。そう、ここが僕のホームだったんだよ」