「僕の楽しみ方は勝利に貢献することだ」
2022-23シーズンも終盤戦を迎えている。どのチームにとってもプレーオフを見据えて慌ただしい時期だが、ヒートにとっては別の意味が生まれた。レギュラーシーズン最終戦を1カ月後に控えて、ヒートの『生きる伝説』ユドニス・ハズレムが現役引退を表明したのだ。
すでにキャリア20年目、42歳の大ベテランであるハズレムは、マイアミで生まれ育ち、ヒートですべてのキャリアを過ごしている。2003年にドラフト外で入団して、2006年、2012年、2013年の優勝に貢献。当時は『スリー・キングス』と呼ばれたドウェイン・ウェイド、レブロン・ジェームズ、クリス・ボッシュからも一目置かれる存在だった。
NBAで勝つにはスターパワーが必要だが、それ以外のものを提供するのがハズレムだった。ディフェンスとリバウンド。常に勝利を目指して自己犠牲を厭わず、ハードワークに徹する。『ヒート文化の担い手』であることをハズレム自身も自負し、周囲に良い影響を与えてきた。もう何年も主力ではなく、ベテラン最低保証額でロスターに入っているが、その存在感は今もなお健在だ。
一つのチームで20年以上のキャリアを過ごす選手はコービー・ブライアントとダーク・ノビツキーに続いて3人目。今シーズン始動の時点で、「これが最後のシーズン」と彼は明言していたが、ここに来て本当に引退の決意を固めた。
地元紙の『Miami Herald』に対し、彼は「もう終わりだ」と今の心境を語っている。「僕は自分にできる貢献をやりきった。今はもう、ヒートには別の声が必要だと思う。僕に代わって誰かが歩み寄り、チームを引っ張る声を上げるべき時だ」
しかし、彼はまだ燃え尽きてはいない。むしろキャリアの最後に自分の目標を見据え、意欲を燃やしている。「現役生活の最後を楽しみたい気持ちはあるけど、僕の楽しみ方は勝利に貢献することだ」
ヒートは現在35勝31敗で東カンファレンス7位。2月以降は6勝8敗と失速し、プレーオフのストレートインとなる6位まで2ゲーム差と状況は芳しくない。「みんなが思い描いた状況にはなっていないけど、これが今の僕たちの現状だ。でも、物語は書き変えられるはずだ」
「人間は一度に一つのことにしか集中できない。僕らはプレーイン・トーナメントには行きたくない。だからプレーオフに入ることだけに集中する」
ハズレムは過去20年間と同じバスケへの取り組みを最後の日まで続けるだろうが、ヒートの面々は違う。『ヒート文化の担い手』がキャリアの最後を花道で飾れるよう、今まで以上に全員一丸でヒートカルチャーを体現するはずだ。