文=大島和人 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

チームオフェンスの終点に上手く入り、存在感を発揮

17日のレバンガ北海道戦は、田中大貴が持ち味のすべてを出した試合だった。彼は外角からの精密なシュートと、インサイドに自ら切れ込むスピードを持ち、192cm93kgという体格も日本人のガードとしては最大級。そんな25歳が約28分のプレーで今季最多の27点を決め、特に3ポイントシュートは「5分の5」という圧巻の精度だった。

第1クォーター残り7分29秒に3ポイントシュートで初得点を決めると、第2クォーターにはインサイドに切れ込んでからのジャンプショット、3ポイントシュート2本と10分間で8得点。特にブザーと同時に決めた3ポイントシュートは点差を13点差に拡げ、相手に刺さるシュートだった。

チームのお膳立ても素晴らしかった。第2クォーター最後のシュートはディアンテ・ギャレットが左ウイングの位置から一気に反対サイドへ振るアシストを送り、田中は完全にフリーで打てた。第3クォーター最初の3ポイントシュートも正中岳城、ギャレット、ザック・バランスキーがスムーズにボールを動かしてズレができた形からだった。

「昨日の反省を踏まえて、前半はすごくボールが動いていた。ワイドオープンでシュートも打てた。前半だけで(チームが)3ポイントシュートを10本決めていますけど、ディアンテ(ギャレット)も含めて上手くボールをシェアできたことが良かった」。田中がそう説明するチームオフェンスの終点に、上手く彼が入っていた。ギャレットは6アシストで、シューターを生かす役割を見事に果たした。

タフな展開となった試合、勝負を決める局面を任される

第3クォーター残り6分12秒には、ディフェンスリバウンドを取った田中が、そのまま自らコートを横断してレイアップ。彼はこの試合、5本のリバウンドも記録している。それは自身が狙いとするところだった。

「自分がリバウンドを取ればそのままプッシュできて、オプションも増えてくる。リバウンドはちょっと意識して昨日の試合と変えて、今日は積極的に絡むようにした。今日は良い流れができたので、リバウンドの意識を強く持って次もやっていきたい」

17日はトロイ・ギレンウォーターが出場停止で不在という事情もあったが、田中はリバウンドを取るためのフィジカルを持っている。そして前が開けた状況でディフェンスリバウンドを取れば、一気にバスケットへ直行する推進力がある。そんな形も見えた一戦だった。

田中はこの第3クォーター、インサイドへのドライブを中心に11点を記録した。相手が3ポイントシュートを過度に警戒すると、自分で切れ込んでくるのも彼の厄介なところだ。

第4クォーターは彼がベンチに退いている間に点差をやや詰められたが、残り6分1秒に登場するとその8秒後に3ポイントシュートを成功させる。そこから北海道の追い上げに遭い、3点差まで詰められた残り22秒。ボールを託されたのはやはり田中だった。

相手のファウルプレーが想定されたこの場面で、田中はボールを受けるとすぐ多嶋朝飛のファウルを受ける。そして直後のフリースロー2投を落ち着いて成功。落としていれば完全に北海道へ流れを持っていかれる場面で、きっちりとミッションを果たした。タフな展開だったが最終的にアルバルク東京は90-88で勝利を飾り、北海道に連勝している。

問題意識を持って上を目指す姿勢がチームのプラスに

ただ試合後の彼は緩んだ様子など全く見せていなかった。得てしてシューターは浮かれる、弾けることが一切なく、訥々と語るタイプが多い。田中もその典型で、この試合後も過去の反省と、今後への抱負をしっかり語った一方で、『この試合での活躍』には触れようとしなかった。

彼は言う。「試合によって積極的になれている時と、なれていない時。良いパフォーマンスができている時と、できていない時の差がまだある。今日みたいに乗り切れるといいですけど、1試合を通して乗れない時もある。波をできるだけなくして、コンスタントに良いパフォーマンスをしなければいけない」

試合の出だしから積極的にやれた、乗れたことが昨日の活躍につながった。ただシーズン60試合を通してこれをアベレージにすることが、彼の目指すところだ。

もちろんアルバルクは田中のワンマンチームでないし、ギャレット、竹内譲次と卓越した能力を持つチームメートが揃っている。チームでバスケットをする中で、田中だけが目立つことは求められていない。ただそれでも彼は常にチャレンジする姿勢を保とうという問題意識を持ち、上のステージを目指している。それがチームへの貢献にもなるのだろう。

年が明けて1月15日に、Bリーグ初のオールスター戦が開催される。18日に締め切りを迎えるSNS投票は2枠残っているが、田中はファン投票の12名、Bリーグ推薦の10名に入らなかった。

「できれば自分もそのコートに立ちたい」という思いは口にしつつ、彼はその投票結果を他人でなく自分に向け、糧にしようとしているように見えた。

「これは自分が決めることではないので……。ファンの皆さんに協力してもらって、結果を待つだけです。皆さんから真っ先に選んでもらえるような選手に自分がなればいいだけの話。自分がもっと強いインパクトを残せるようにプレーしようと思います」

『大器』はまだ十分にその潜在能力を発揮していない。そしてそのことを彼自身も分かっている。それを強く感じた17日の多彩なプレーと、その後の控え目な言葉だった。

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