カール・タマヨ

2勝0敗でグループリーグを終えるも、得失点差で決勝進出を逃す

琉球ゴールデンキングスは3月4日、『EASL(東アジアスーパーリーグ) Champions Week』のグループリーグ最終戦で台北富邦ブレーブス(台湾P.LEAGUE+)と対戦。後半にディフェンスの強度を上げると、24得点を挙げたジャック・クーリーを軸にインサイドの肉弾戦で主導権を握った琉球が83-78と競り勝った。

これで琉球は2勝0敗でグループリーグを終えた。しかし、今回のフォーマットは4チームのグループでありながら総当たりではなく、対戦は2チームのみと変則的となっている。対戦のなかった安養KGC(韓国KBL)が、琉球の前の試合でサンミゲルビアメン(フィリピンPBA)に142-87と圧勝し2勝0敗としたことで、琉球は得失点で下回りグループ1位になれず。本日16時からの3位決定戦へと進むことになった。

完全に集中力の切れたサンミゲルの緩慢なディフェンスもあり、琉球は決勝進出を果たすためには台北富邦に53点差以上の勝利が必要な状況となっていた。桶谷大ヘッドコーチが、「必要のないものが脳にインプットされてしまったことで、前半の判断などに問題が出てしまったかなと思います」と振り返ったように、この異常な状況で選手たちはいつものプレーができなかった。前半は攻め急ぎから自分たちのリズムでプレーできず守備にも悪影響を及ぼし、45-45の同点で折り返した。

だが、ここでズルズルと悪い流れのままいかず「後半は切り替えて自分たちのバスケットができました」と指揮官が評価したように、第3クォーターは得意の堅守速攻で23-8のビッグクォーターを作り出す。そして第4クォーターも、相手に流れを渡さずに逃げ切った。

決勝進出を逃したことは悔やまれるが、しっかりと勝ち切ったことは評価できる。また、選手個々で見ると2日前に琉球の一員として初の実戦をこなし、この試合がホームデビュー戦となったフィリピン出身の新星カール・タマヨが15分の出場で3ポイントシュート2本成功を含む13得点と、持ち味である多彩なオフェンス力を披露したことは大きな収穫だった。

フィールドゴール7本中2本成功と不発に終わったデビュー戦との違いをタマヨはこう振り返る。「(デビュー戦は)すべてが速い感覚でしたが、今日は自信を持ってプレーできましたし、ホームの声援が助けになりました」

また、周囲のサポートのおかげで落ち着いてプレーできたと強調する。「僕に自信を与えてくれたチームメートに感謝をしたいです。最初のシュートをミスしましたが、僕にシュートを打ち続けるモチベーションを与えてくれました。また、フィリピンの皆さんの応援も僕の力となりました」

カール・タマヨ

注目のカイ・ソットとの対決に「とてもエキサイティングで、楽しみにしています」

そして、この試合では序盤に3ポイントシュートを連続で決めて、相手が警戒してくると今度はドライブ主体に切り替えそのままゴール下で決め切る冷静な判断力も光った。「相手の動きにアジャストすることを心がけています」とタマヨは自身のプレースタイルを語る。「3ポイントシュートを決めれば、ディフェンスがハードに寄ってくる。そこでスマートかつ成熟したプレーをするようにしています。相手が僕の近くに来れば、ドライブでアドバンテージを得られる。コーチのアドバイスもあり、後半はボールをよく動かすことでチームの助けになれたと思います」

チーム合流直後でありながら結果を残した22歳の若者について、桶谷ヘッドコーチは「Bリーグでもビッグマンのローテーションに入っていけるくらいの活躍をしてくれました」と評価をする。

202cmのサイズと広いシュートレンジを持つタマヨの存在は、琉球に新たなオプションをもたらしてくれると指揮官は続ける。「彼が入ることでスペースを広げられる。もう一人のビッグマンが中でプレーしたり、ガード陣がアタックするスペースができる。例え、タマヨが得点をしなくてもプラスになる要素がかなりあると思います。Bリーグで対戦相手が3ビッグで来た時、サイズアップするために3番という可能性もでてくると思います」

また、司令塔の役割もこなす牧隼利は、タマヨの魅力をこう語る。「彼は走れる選手で、1対1もできますし、ディフェンスもがっつり守れます。3ポイントシュートがあるのでピック・アンド・ポップの新たなオプションとして面白いです。非常に楽しみな存在です」

大きな可能性を見せたタマヨ。本日の3位決定戦の後は、水曜に同じフィリピン出身の逸材で今、最もNBAに近いアジア人選手の一人と評される220cmのカイ・ソットが加入した広島ドラゴンフライズ戦が控えている。タマヨとソットは2018年のU17ワールドカップ、2019年のU19ワールドカップでチームの中心選手を務めるなどアンダー世代から一緒に代表活動をしてきた旧知の仲だ。

母国のフィリピンでも大きな注目を集める対決について、「3位決定戦は大事な試合でプロセスをしっかり踏んでいきたい」と目の前の試合に集中した上でこのように意気込みを語る。「ソットとは高校の時から一緒に代表でプレーしてきました。彼との対戦はとてもエキサイティングで、楽しみにしています」

今回の活躍ぶりで、琉球の悲願のタイトル獲得に向けた最後のピースとしてタマヨに対する周囲の期待はより大きくなってくるだろう。だが、本人は何よりもチームファーストを第一に考えている。「ハードにプレーして、コーチダイ(桶谷ヘッドコーチ)が求めることをやる。自分のできることをやって、どんな方法でもチームの勝利に貢献していきたいです」

若者らしいアグレッシブなプレーと、ベテランのような冷静さも併せもつタマヨは、琉球をもう1段上のレベルに引き上げる可能性を持っている。彼はBリーグの覇権争いに少なくない影響を及ぼす存在になってくるはずだ。