ジョシュ・ホーキンソン

代表デビュー戦「選手として本当に楽しい経験でした」

2月23日、男子日本代表がワールドカップ予選Window6でイラン代表と激突。トム・ホーバス体制になってから昨年は公式戦でともに2桁以上の点差をつけられ連敗していた相手に対し、この試合は序盤から攻守の速い切り替えからゴール下でのイージーシュートを決め、効果的に3ポイントシュートを沈める理想的な展開で96-61と圧勝した。

アジアの強国イラン相手の快勝を、トム・ホーバスヘッドコーチは次のように総括する。「40分の内、38分は自分たちのスタイルのバスケットボールができました。おそらく私が代表を率いてからベストのゲームだったと思います」

振り返れば前日練習後の取材対応で、ホーバスヘッドコーチは「これまでずっと代表に選ばれているメンバーはできても、新しい若い選手たちが入ると、しっかりとリズムが作れるのか分からないです」と、新戦力がどこまでチームにフィットできるか不安を抱えていた。

しかし、蓋を開けてみれば、この試合がフル代表デビューとなった帰化枠のジョシュ・ホーキンソン、金近廉、さらにホーバス体制では初の代表戦となる渡邉飛勇と、新顔の3人がそれぞれ持ち味を存分に発揮して勝利に大きく貢献。指揮官の心配は完全に杞憂に終わった。

3ポイントシュートを10本中6本成功させて20得点を挙げた金近、6得点にオフェンスリバウンド4本を含む8リバウンドの渡邉はもちろん素晴らしかったが、ホーキンソンは17得点11リバウンド4アシストと2人以上の活躍ぶりだった。そして、出場時の得失点を表すプラスマイナスはチームトップの+29と、スタッツ以上のインパクトを与えていた。

ホーキンソンは、次のように鮮烈な代表デビューとなった一戦を振り返る。「選手として本当に楽しい経験でした。チームの決まりごとに従うことでプレーしやすかったです。前半は何故だか分からないですけど、少し戸惑いもありました。だけどチームメート、チームのスタイルを信頼することで、円滑にプレーできるようになりました」

また、すぐにチームにフィットできた背景には「僕の強みを生かせるように、トムコーチとは合宿中によく話しをしました」とオフコートでの努力もあった。その上でもっと良いプレーができると頼もしい言葉を発している。

ジョシュ・ホーキンソン

「彼はあらゆることができますが、特にパサーとして素晴らしいです」

日本代表はこれまでのイラン戦に限らず、相手のスイッチディフェンスに苦戦してきた。だが、今回は「今までは相手のスイッチに足が止まってしまいましたが、今日はそれがなかったです」とホーバスが振り返ったように、強化合宿でしっかり準備をした成果が出た。

オフェンスで足が止まらなかったのはホーキンソンの存在が大きい。ゴール下へのアタックに加え、外からも打てるホーキンソンに対し、イランは彼へ積極的にダブルチームを仕掛けてきた。だが、ホーバスが「彼はあらゆることができますが、特にパサーとして素晴らしいです」と称える非凡なパスセンスで的確に対処することで、オフェンスのリズムを作り出した。

ホーバスは次のように続ける。「ジョシュはインサイド、アウトサイドの両方でパスを上手にさばけます。相手がダブルチームに来ることでオープンになった味方にパスを出して、ディフェンスを少しずらすことができました。これでディフェンスに悪いポジションでの対応を強いることでアドバンテージが作れる。それもあってカッティング、3ポイントシュートがうまくいきました。」

また、日本は今回欠場したイラン代表の大黒柱、218cmのハメド・ハダディに対し、人数をかけて守りにいくも、その隙を突かれて他の選手にオープンシュートを決められていた過去がある。だからこそ指揮官は「ハダディがいた時にやられたことをやりかえすことができました」と笑顔を見せた。

文句なしの代表デビューとなったホーキンソンだが、謙虚な本人は満足していない。「代表デビュー戦でどんな形であれ勝利を収めることができて良かったです。良いプレーができたと思いますが、もっと良いディフェンスができましたし、もっと走ることでチームメートのシュートチャンスを作り出せたと思います」

この飽くなき向上心で日本代表をさらなる高みに引き上げ、26日のバーレーン戦ではどんなコンビプレーを生み出してくれるか。さらに楽しみが大きくなる、ホーキンソンの攻守に渡る大暴れだった。