マック・マクラング

「目標はダンクコンテストじゃなくNBAでインパクトを残すこと」

マック・マクラングのNBAでのプレー経験は昨シーズンにレイカーズとブルズでそれぞれ1試合に出場しただけ。今シーズンはウォリアーズのトレーニングキャンプに参加するも、「ウチにはパス重視のポイントガードが必要」と開幕を待たずに解雇されている。その後はセブンティシクサーズ傘下のGリーグチーム、デラウェア・ブルーコーツでプレーし、4日前にシクサーズと2ウェイ契約を結んだものの試合出場はまだない。フィリーのファンの中にも、NBAオールスターのダンクコンテストに彼がシクサーズのユニフォームを着て登場した時に「誰だ?」と思った人は少なからずいただろう。

ただ、マクラングは知る人ぞ知る存在ではあった。高校時代から彼のダンクを集めた動画は注目され、『白人では最上最高のダンカー』の異名を取った。188cmと小柄な白人が強烈なダンクを連発するシーンは、確かにインパクトがある。そして昨シーズンのGリーグでは新人王を受賞している。

それでも、NBAオールスターのダンクコンテストという大舞台で、彼は人生最大のインパクトをもたらした。予選で2回、決勝で2回のダンクのうち、3つは審査員全員が50点満点を付けた。残る1つも49.8点とほぼ完璧。「世に出ていないダンクを仕込んできたんだ」と彼は言う。

最後のダンクは高校のユニフォームに着替えて挑戦。540度回転してリバースでリムへと叩き付けるダンクを決めると、2004年のダンクコンテストでビンス・カーターが優勝した時の『終わりだ!』(It’s over!)を真似てアピールした。

NBA選手としては無名の彼を、オールスター選手たちが取り囲んでその才能を称える。決勝の相手だったトレイ・マーフィー三世も、これには脱帽といった感じでマクラングのダンクを眺めており、この時ばかりは彼がコート上の主役だった。

マクラングによれば、この『540度』は練習では一度も成功したことがないという。それでもダンクコンテスト本番の雰囲気が自分を押し上げてくれるはずだと彼は考え、実際にこの大技を一発で成功させている。

一夜にして誰もが知る存在となったマクラングは「感謝しかないよ。正直、何が何だか把握できていない。ネットでは大盛り上がりなんだろうな」と笑う。「でも、みんなに感謝している。ダンクを手伝ってくれた2人の友人のおかげでもあるし、他にも多くの助けがあったから上手くいったんだ」

「ここまでNBAでの僕は評価を得られていなかった。別に誰かが間違っていると言いたいわけじゃないけど、自分が正しいんだと証明できたことに満足感はある。ただし、僕の目標はダンクコンテストじゃなくNBAでインパクトを残すことなんだ。それができるまでは毎日、自分自身を磨き続けていくつもりだよ」