ゴードン・ヘイワード

写真=Getty Images

モリスも太鼓判「彼は克服したんだよ」

昨年のオフにフリーエージェントになり、名門セルティックスに移籍したゴードン・ヘイワードは、カイリー・アービングと共にチームの柱の一人として期待された。だが、キャバリアーズとのシーズン開幕戦で、左足首の脱臼、脛骨骨折という重傷を負い、たった5分で彼のセルティックス1年目は終わった。

左足首があらぬ方向に曲がったシーンは衝撃的だった。手術を受けたヘイワードは、約1年に及んだリハビリとトレーニングを経て、再びNBAのコートに帰ってきた。ここまでは順調だった。心情としては、あれだけの大ケガから復帰したのだから、1年目は個人スタッツが落ちても受け入れられるという意見が多いかもしれない。しかし、復帰した以上、ヘイワードはチームの柱として活躍する必要があった。何しろセルティックスは今シーズンの優勝候補の一角だからだ。

開幕から中々状態が上がらなかったヘイワードにとって大きなターニングポイントになり得るのは、12月1日のティンバーウルブズ戦だろう。この試合で彼は、5本中4本の3ポイントシュートを含むフィールドゴール16本中8本を決め、今シーズンベストの30得点9リバウンド8アシストを記録した。実は、ウルブズ戦の前からヘイワードが爆発する兆候はあった。そのきっかけとなった出来事は、同試合の3日前の練習だった。

マーカス・モリスによれば、その日の練習はシーズンで最も激しいものになり、多くの選手がヘイワードに厳しく身体を当てたという。中でも激しいコンタクトを見せたのはマーカス・スマートだったらしく、ヘイワードは闘志をむき出しにしてプレー。そして、トランジションから叩きつけたダンクは、彼がチームに加入してからチームメートが初めて見るような強烈なものだったという。

ヘイワードは、この時の練習後に行われた11月30日のキャバリアーズ戦で14得点を決めた。そしてウルブズ戦で、2017年5月6日のウォリアーズ戦以来となる30得点超えを果たした。ただ単にシュートの精度が上がっただけでなく、これまでのどの試合よりもアグレッシブに攻めるヘイワードが戻ったのだ。おそらく、彼はシーズン開幕から、良い意味で自分を抑制していたのだろう。チームの歯車として機能することを優先し、先発からベンチへの配置換えも受け入れた。もちろん、大ケガからの復帰ということもあり、精神的な恐怖を克服できず、無意識に故障した足首をかばっていた可能性もある。本来なら久々の爆発を喜んでも不思議ではないものの、ウルブズ戦でのパフォーマンスを、ヘイワードは冷静に分析していた。「良過ぎてもいけないし、悪過ぎてもダメ。落ち着いてやっていくだけさ。また良い練習をして、身体を回復させて、この結果から次に繋げていく。安定したプレーをしないといけない」

彼が言うように、次のステップは、ウルブズ戦でのようなプレーを当たり前にこなすことだ。モリスは『Maslive』に「彼は自分を取り戻そうとしていた。克服したんだよ。人間なら、(ケガした足首を)かばったり、気にしたりするもの。ただ、もう大丈夫だろうね。彼も自分の身体が問題ないことを分かっただろうし、これからもっと良くなるよ」と語った。

ウルブズ戦後にインタビューを受けたヘイワードは、チームメートに頭から水をかけられ祝福された。その3日前の練習は荒療治だったのかもしれないが、彼の内で鎖に繋がれていた獅子が解放された瞬間だった。