煽られる競争原理にも意欲「またゼロから頑張りたい」
アルバルク東京のシューター、「KJ」こと松井啓十郎。3ポイントシュートの成功率は、17勝4敗と好調なチームにおいてトップの40.7%を記録しているKJが日本代表候補重点強化選手のメンバー68名に選出され、第1回重点強化合宿に参加した。
7月に行われたリオ五輪世界最終予選(OQT)を戦う12名に入るなど代表経験豊富な松井だが、「代表に来るたびに気合は入ります」と、毎回フレッシュな気持ちで臨むと言う。
今回代表枠を広げたのは『競争原理を作るため』と技術委員長の東野智弥は説明したが、松井はその思惑通りモチベーションを高めている。「東野さんも今までのキャリアと実績はゼロにして、と言っていたのでまたゼロから頑張りたいという気持ちです」
ルカ・パヴィチェヴィッチによる初めての練習を、「細かいところまで指摘してもらったし、他の選手が指摘をされている部分を聞くだけでも勉強になる」と松井は評した。
今回の合宿ではケガで見学しかできなかった選手もいる。そういった状況の中で新たな知識を得ようと貪欲な姿勢を見せる。「自分は健康体でやれているので、見てるだけでなくコートでできるのは(理解度が)違うのかなと思います」
「他の国よりタフな練習をしないと上には行けない」
ファンにとって日本のバスケットボールの水準が上がり、代表が強くなることは喜ばしいことだ。だが、懸念もある。それは年間60試合のレギュラーシーズンにプレーオフ、国際試合に合宿とハードなスケジュールだ。今回も選手たちは土日の試合を終えてから、休みもなく合宿に参加している。
それでもタフな日程の中で活動している松井は一定の理解を示し、日本の現在地を冷静に分析する。「仕方がないと言ったらおかしいですけど、これから世界で戦うためにはシーズン中もそういうことをしなければいけないです」
「早い時期からタフな練習をして身体を慣らさせていかないと。日本はアジアの中でもトップではないので他の国よりタフな練習をしないと上には行けないというのは感じてます」
合宿を終え、週末にはまたアルバルク東京での試合が待っている。今回の合宿で得たことを早速チームで生かしたいと語り、自身の成長を促す。
「日本人は『無駄なヘルプをしすぎ』と指摘されました。そういうところはチームに帰ってアジャストしていきたいと思います。特にディフェンス面ではピック&ロールにいかれた時にアグレッシブに行くというところはためになったポイントです」
先日結婚発表をしたばかり松井に、「新婚の身にはこの招集はつらいのではないか」という質問がなされると「そんなことはないですよ」と苦笑まじりに否定した。バスケは仕事と理解してますし、妻も『代表頑張って』と応援してくれているので大丈夫です」
31歳になった松井啓十郎、年齢的にはベテランの域に差し掛かっているが、気持ちはまだまだフレッシュだ。新しいものを取り入れて成長しようとする意欲に衰えはない。今回の合宿で得た経験をチームに持ち帰り、また一つレベルアップしたKJがアルバルク東京の試合で見られるはずだ。