ザック・バランスキー

大事な場面で顔を出す、いぶし銀な活躍で勝利に貢献

アルバルク東京はガード陣の故障や田中大貴の離脱といったアクシデントに見舞われながらも、強力なインサイド陣のアドバンテージを生かしつつ、安定したディフェンス力でリーグ2位の勝率を残している。

先週末に行われた新潟アルビレックスBB戦に連勝し、ホームでは破竹の14連勝と好調を維持しているが、第2戦はロースコアゲームに持ち込まれ67-63での辛勝だった。特に前半は新潟のタフなディフェンスに手を焼き、シュート確率が上がらずに先手を取られた。第2クォーター終盤に逆転したが、その後も突き放しきれず最終クォーターには約7分間フィールドゴールの成功がナシに終わるなど苦戦した。それでも、最終クォーターだけで11本のフリースローを獲得し、主導権を決して渡さなかったことが勝利に繋がった。こうした観点から、最終クォーターのプレータイムは5分弱ながら、4本のフリースローを獲得したザック・バランスキーの貢献度はスタッツ以上に高かったと言える。

また、リードチェンジを繰り返した第3クォーターには、セバスチャン・サイズのスティールからトランジションオフェンスに転じると、駆け上がったバランスキーが3ポイントシュートを射抜き、この試合初めてとなる3ポゼッション以上のリードをもたらした。ターンオーバーからの失点は、数字以上にダメージは大きく、バランスキーの要所での活躍は目立っていた。彼自身も状況に適したプレーができたと振り返っている。

「昨日は(3ポイントシュートを)4本決めましたが、何本打ちたいという願望はなく、流れの中で打てそうだったら打つことを意識しています。チームにとって一番良い選択をしたいと思っていて、後半の大事なところで決めることができて、チームに勢いを与えられたとは思います。良いディフェンスとボールプッシュがあったので、本当にチームとして作ってもらった3ポイントシュートだったなと感じました」

また、バランスキーはこの試合でシーズンハイ(タイ)の6本のディフェンスリバウンドを獲得した。これは新潟のコフィ・コーバーンのリバウンド力を警戒し、インサイド陣以外の選手も含めた全員がリバウンドへの意識を高めた結果だとバランスキーは言う。

「コーバーン選手が大きくて、セバ(セバスチャン・サイズ)やライアン(ロシター)、アレックス(カーク)が取れそうなリバウンドでも無理やり奪われることもあるので。ビッグマンがゴール下で戦っているから、彼らだけに任せるのじゃなく全員で取ろうという意識がありました」

ザック・バランスキー

「ルールを破っていかないとプレータイムを勝ち取れない」

選手はヘッドコーチの戦術をいかに体現できるかが求められるものだが、バランスキーは時にこのルールを破り、自分の感性を優先して行動することもあるという。実際にこの試合でも独自の判断でヘルプに行き、結果的に失点に繋がった場面があった。だが、それはチームメートとの信頼関係が築けているからこそできるとバランスキーは言う。

「オーバーヘルプに行っちゃって、自分のマークマンにボールを飛ばされた時にアキ(藤永佳昭)がローテーションしてくれました。結果的に決められましたが、周りがカバーしてくれるし、チームディフェンスはしっかりと機能しているので。コミュニケーションと信頼があるからこそ、ちょっとはルールを破ってもいいと思っています」

A東京の指揮官、デイニアス・アドマイティスは以前、「ベテランの一角で、勝負どころがどこかを彼は知っています」とバランスキーについて語り、IQの高さを評価していた。また、バランスキーも指揮官について「『実際に試合に出ているのはお前たちだから』と言ってくれて、自分が本当にそう思ったらある程度自分で判断させてもらっている部分はあります。ただの勘違いかもしれませんが、感性を大事にしてくれているコーチだと思っています(笑)」と話すように、指揮官とも良好な関係を築けていることがうかがえる。

バランスキーはここまで34試合中16試合で先発起用されているが、これは初年度と昨シーズンの12先発をすでに超え、キャリアハイの数字となっている。チーム内で確固たる地位を築いているバランスキーだけに、ヘッドコーチの指示を無視してギャンブルに出る必要はないはずだ。それでも「逆に自分の場合は、そういうところを破っていかないとプレータイムを勝ち取れないと思っています」と、チーム内競争に勝つために己の感性を信じていると彼は言う。

「自分がこのチームで生きていく道はどこかと考えると、人と違ったディフェンスの視点だったり、ファウルを上手く使う部分。チームとしてのやり方がある中で、『なんで一人だけここにいるの?』って場所にいると、相手も攻めづらくなると思います。それは個人的にすごく大事にしているモノの一つですし、ただのロールプレーヤー以上であることを証明したいと思っています」

実力が拮抗したチーム同士が戦う場合、ロールプレーヤーのパフォーマンスが勝敗を左右するケースも多い。特に主力の離脱が顕著なA東京が好成績を収められているのは、『ただのロールプレーヤー以上』の存在感を示しているバランスキーがいるからといっても過言ではない。