「ファウルされたらフリースローラインに立ち、ただ決めようとするだけ」
ヤニス・アデトクンボは止められない。現地1月27日のペイサーズ戦、前半だけで85得点を奪って29点差を付けた。前半のアデトクンボは効率良く15得点を奪いつつチームトップの4アシストを記録。ベンチから出たクリス・ミドルトンの17得点を筆頭に、アデトクンボも含めて6選手が9得点以上を挙げた。チームのフィールドゴール成功率は63.5%、アシストは19と素晴らしいパフォーマンスだった。
それでも、これだけ大差が付くと気の緩みはどうしても生まれる。前半は不発だったシュートが当たり始めたバディ・ヒールドとTJ・マッコネルがオフェンスを引っ張り、膝のケガで欠場が続くタイリース・ハリバートンの不在を感じさせないようになる。ただ、大量リードの展開でバックスは主力を温存する余裕があり、ペイサーズが終盤に勢いを増しても十分にしのげる見込みは立っていた。
それでも、最大33点差あったリードが第4クォーター残り4分で8点差にまで詰められると、余裕ではいられない。ここで問題となったのがアデトクンボのフリースローだ。前半は1本放って外し、第3クォーターは5本打って1本しか決められず。ペイサーズは第4クォーターになってハック戦術を使い、アデトクンボに12本のフリースローを与えている。試合を通じて彼のフリースローは18本中7本の成功。フィールドゴールは29本中16本と高確率で決めているから、故意にファウルしてフリースローを与えるハック戦術は有効だったことになる。
ただ、試合後のアデトクンボは「逃げ出すのか、受け入れてフリースローラインに立つか、そう考えたらどちらを選ぶかは言うまでもない。ファウルされたらフリースローラインに立ち、ただ決めようとするだけ」と語っている。実際、ハック戦術はただフリースローの苦手な選手を狙って得点期待値を下げるだけでなく、精神的な揺さぶりをかけてリズムを狂わせる効果が大きい。しかしアデトクンボは、自分が決してフリースローが得意ではないことを受け入れながらも怯むことなく、彼らしい積極性を失わなかった。
リーダーであるアデトクンボが前向きなマインドを失わず戦い続けたおかげで、他の選手も最後まで力強いプレーを連発した。残り1分、アデトクンボはマイルズ・ターナーをフィジカルで押し込んでドライブのコースをこじ開け、141-129と勝負に決着を付けるシュートを決めている。
アデトクンボが決めた16本のシュートのうち、最もインパクトが強いものは第4クォーター残り8分半にアレンからのパスを受け、オシェイ・ブリセットを飛び越えて決めたモンスタースラムだ。アシストパスを送り、目の前でこのダンクを見たアレンは「最初はすぐ彼にボールを預けようとも思ったけど、プッシュしてディフェンスを引き付けて最後の瞬間にボールを返すことにした。ドライブしながら呼吸を合わせていたんだ。彼が踏み込む瞬間はちょっと無理なんじゃないかと思ったけど、すごいものを見たよ」と感嘆の笑みとともに振り返る。
ドリュー・ホリデーは「あんなの、僕もやってみたいよ」と苦笑いし、パット・カナートンは「ただ後ろから眺めていただけだよ、こんな顔でね」と口を大きく縦に開いてみせた。
アデトクンボによれば、前半にダンクに行けるシーンで普通のシュートに行ったところ、アレンに「もう跳べないのか?」とジョーク混じりで挑発されたそうだ。「アレンのおかげだね。ナイスプレーだった」と彼はほほ笑む。これでバックスは3連勝。アデトクンボを含む主力にケガが続く苦しい時期を、どうやら乗り越えたようだ。