文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

チームの向上を認め、自らの責任に真正面から向き合う

12月10日のシーホース三河戦、横浜ビー・コルセアーズは最後の最後まで競った試合展開に持ち込んだが、あと一歩及ばずに敗れた。『ハマのオフェンスマシーン』こと川村卓也は、5本の3ポイントシュートを含むゲームハイの24得点を挙げてチームを引っ張った。

これまで、敗れた試合後には自身を含むチームに厳しい言葉を口にすることが多かった川村だが、この日は違った。「いつもだったらガタガタいってしまうところをみんなで気を引き締めて最後までボールを追いかけられたのは良かったです。だらしないゲームが続いた中で最後まで争う姿をホームゲームで見せられた。少しずつですがチームが前進してるのかなと、やりながら思いました」と、手ごたえを口にする。

これまで川村が自分を含めたチームに指摘してきたのは2つ。立ち上がりに緩く試合に入り、大量ビハインドを背負ってようやくエンジンがかかり敗れるパターンと、これから勝負どころという場面で緩んでしまいズルズルと敗れるパターン。川村に言わせれば「だらしないゲーム」だ。

川村は言う。「だらしないゲームをやってまた翌週にだらしないゲームをやるっていう、プロらしからぬことが何度も続いてきて、コーチというより選手同士がそういったゲームをやってはいけないという自覚を持ち始めています。これまで声を発するのは僕だけだったけど、要所で(細谷)将司やジェフ(ジェフリー・パーマー)だったり、僕がチームを締めるというより自分たちで締まろうとして、良い雰囲気を作ろうとしていた」

チームが気を引き締めて40分間を戦うというベースがあって、その上で川村がプレーと得点でチームを引っ張っていく。その結果が三河相手の大健闘だった。ただ、勝利には至らなかった。83-85で迎えた残り20秒、タイムアウトで川村で勝負することが確認される。実質的に最後のポゼッション、川村のジャンプシュートが外れた。あと一歩及ばず、その『一歩』を託されて失敗した責任を、川村は真正面から受け止めている。

「僕自身、シュートに行くまでのシチュエーションは悪くなかったし、タッチ的にも悪くなかったので、自分で行きましたが、2メートル10近い選手を目の前にジャンプシュートを打つより、それに限らず他の選択肢もあったのかと思うと……。ベンチの指示は遂行できているんですけど、その中でバリエーションを見つけられなかった自分のミスです。責任を託してもらって、そこで僕が今日は仕事ができなかった」

日本代表復帰、評価された喜びとリスクの懸念

その川村は先週発表された日本代表の重点強化選手の68選手に名を連ねている。久々の代表復帰にさぞ喜んでるかと思いきや、話はそう単純ではなかった。

「評価していただいたことはうれしいですし、ケガをして評価されるようなプレーができていなかった中でそういったプレーが出始めているのはケガをしてからの成長だとも思います。ただ、僕の今のメンタルと身体的には代表に注力してる余裕は正直ないなと思っている」と川村は言う。

「今年ビーコルに来て新しいチャレンジをしている身としては、ビーコルが勝率5割に戻すこと、そしてプレーオフ圏内を争えるところまで上りつめることが今年のビジョンなので。僕に余力が残れば代表もしっかり視野に入れながら戦いたいと思いますが、シーズン途中の今は申し訳ないけど僕のビジョンはビーコルに100%取られている、というのが正直なところです」

1986年生まれの川村はまだ『年寄り』ではないが、右膝のケガで長期離脱を強いられた過去があり、昨シーズンまで所属した三菱電機名古屋では満足なプレーができなかった。降って湧いた日本代表の話に、喜びと同時にリスクを感じてしまうのは無理もないことだ。

とりあえず12月の強化合宿のメンバー表に川村の名前はない(横浜からは細谷が参加)。ただ、68名の重点強化選手に入っている以上は、いつ招集されてもおかしくない。横浜でこれだけの存在感を見せている今であればなおさらだ。

「まぁやれって言われたらやるのが僕らの使命なので、その時が訪れたらしっかりそこも視野に入れてやりたいと思います」

川村にとっては横浜の勝率を5割に戻すことが最優先。ここまで7勝15敗と借金がかさんでいることを考えれば、簡単ではないミッションだ。30歳を過ぎてもチーム最長のプレータイムを得ており、横浜の試合では常にエネルギッシュにプレーしている。今は横浜に集中して──川村はハードワークを続ける。