「こんな素敵な瞬間を僕と彼で共有できたのは特別なことだった」

アジア出身選手の数が年々増え続けているのが顕著な現在のBリーグだが、これを受け、『ドットエスティ B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2023 IN MITO』ではアジア人選手だけでチームを組み、リーグの実力ある若手を中心とした日本人選抜チームとの『B.LEAGUE ASIA RISING STAR GAME』を初めて開催した。

試合はアジアオールスターチームが前半で20点差をつけ、後半にライジングチームが点差を詰め会場を盛り上げる展開の末、前者が118−114というハイスコアリングゲームで逃げ切った。

アジアオールスターチームの面子の大半はフィリピン出身選手が占めたが、その中で注目を集めたのが2020-21シーズンから導入されたアジア特別枠を使って初めてBリーグ入りしたサーディ・ラベナ(三遠ネオフェニックス)と、兄のキーファー・ラベナ(滋賀レイクス)兄弟が同じチームでプレーしたことだ。キーファーは29歳で、サーディはその3つ下だが、最後に一緒にプレーしたのはいつだったかを問うと「まったく覚えてないなあ」とキーファーは言う。しかし、サーディが「たぶん僕が大学1年生だった時だよ」と助け舟を出すと「ああ、そうだった。僕が大学4年生の時だね」と、キーファーは笑顔になった。

ラベナ兄弟は、父親がフィリピンプロリーグで選手とコーチとして有名だった父と、大学バレーボール界で人気のあった母を持つなどスポーツ一家に育ち、ともにアテネオ大マニラ校という教育面でもスポーツ面でも同国トップクラスの名門校出身だ。2020-21シーズンにBリーグがアジア特別枠を導入し、サーディはこれを使ってプレーする第一号となり、キーファーは翌年、弟に続いて来日している。とはいえ、普段は異なるチームでプレーするだけに、今回のオールスターで数年ぶりに同じユニフォームを着たことは2人に感慨をもたらした。キーファーは言う。「いつもはここ日本で対戦する立場にある僕らだけど、今回、(サーディ)と一緒にプレーできたのはとてもうれしかったよ。こんな素敵な瞬間を僕と彼で共有できたのは特別なことだったし、フィリピンにいる僕らの家族にとっても特別なこととなったよ」

試合は両軍とも3ポイントシュートやダンクを積極的に狙いにいく展開となったが、その中でラベナ兄弟はかなり長い時間、ともにコートに立った。ただ、2人のコンビネーションによるビッグプレーは不発に終わった。最大のチャンスは第2クォーター終盤、キーファーが中に切れ込むサーディを確認し、アリウープパスを送ったが、ボールはサーディの頭上を超えてしまった。このプレーについて「8年ぶりで一緒にプレーするんだから感覚がさびついてしまっていたよ」とキーファーが冗談交じりで言うと、サーディは「もっと練習しないとね」と微笑みながら続いた。

キーファー「これを実現してくれたリーグには感謝しかない」

キーファーは8得点、サーディが7得点とスタッツ上で特段目立つことはなかったが、ベンチに下がっている時に、味方が派手なプレーを見せると立ち上がって叫びながら喜びを表すなど、年に一度の祭典を楽しんだ。会場にはフィリピン人のファンがアジアチームの応援に駆けつけていたようで、試合中、それに気づいたキーファーがサーディーとともに彼らへ手を振る場面もあった。聞けば知り合いではないとのことだが、キーファーに言わせれば異国でともに頑張っている同胞は『ファミリー』だという。「僕らも彼らも家族は母国にいるという点で境遇は一緒。だから試合の応援に来てくれる彼らのような人たちを僕らは家族のように感じているんだ」

今回、初の試みとなった『B.LEAGUE ASIA RISING STAR GAME』だが、これが実現したのもアジア人選手だけでチームを編成できるようになったからだ。2人はこのような機会を与えられたことに感謝の念を示した。

「僕らアジア人選手がこのような試合をやらせてもらえることは素晴らしいことだし、普段は別々のチームで戦う僕らフィリピン人選手がここに集まって、クラブだけじゃなくて国を代表してプレーできることは最高の気分だよ」(サーディー)

「今回の試合が初となったわけだけど、これを実現してくれたリーグには感謝しかないし、なによりもうれしいのは僕らフィリピン人も、韓国、中国、インドネシアの選手たちと一緒になってリーグのライジングスターを相手に勝利を手にできたことかな。とても誇らしいよ」(キーファー)