ジミー・バトラー

ヒートは40本のフリースローすべてを決め、NBA新記録を達成

ヒートが40本のフリースローを1本も外さず決めて112-111で勝利したサンダー戦は、フリースローの大切さをあらためて痛感させる試合だった。40本すべてのフリースローを決めるのは、1982年12月にジャズが記録した『39本すべて成功』を塗り替えるNBAの新記録となった。

サンダーはとにかくファウルが多かったが、それは攻守ともにアグレッシブにプレーした結果であり、何度か点差が離れても食らい付くタフな戦いぶりを見せた。26得点を挙げたシェイ・ギルジャス・アレクサンダー、トリプル・ダブルのジョシュ・ギディの活躍だけでなく、8人ローテのヒートに11人ローテで対抗し、11人全員が得点を記録するバランスの良さもあった。

しかし接戦で迎えた終盤には、なおさらフリースローが大事になる。第4クォーター残り3分を切ってから、シェイの3ポイントシュートにギディ2点シュート連発と連続得点を挙げたサンダーが競り勝つかに思われたが、2点リードで残り22秒という場面で、ケンリッチ・ウィリアムズがフリースロー2本をいずれも落としてしまう。

どちらも決めていればセーフティーリードの4点差だった──。そんな思いがサンダーの選手たちの頭をよぎり、守備に戻る一歩を遅れさせたのかもしれない。いずれにしてもヒートはリバウンドを拾って攻めに転じ、ビクター・オラディポのプッシュからバトラーにボールを託す。バトラーはシュートを阻もうとするジェイレン・ウィリアムズからポンプフェイクできっちりファウルを引き出した上で、シュートも決めた。

バスケット・カウントのボーナススローがバトラーにとっては23本目のフリースロー。これを危なげなく決めて勝ち越し、そのままヒートが勝利した。バトラーは「試合が終わった時点では、記録のことは知らなかった。それよりも1点差で勝てて興奮していた」と語る。

カイル・ラウリー、タイラー・ヒーロー、バム・アデバヨのスタメン3人を含めコンディションの整わない選手が多く、負けてもおかしくない状況にあったヒートだが、それでも逆転勝利を収めている。

「勝つために必要なことは何でもするんだ」とバトラーは言う。「実際、やっていることは変わらない。ペイントを攻め、リムに向かい、自分がシュートを打てなければパスを回してチームメートにチャンスを託す。それだけなんだ。正直なところチームはピンチで、スポ(ヘッドコーチのエリック・スポールストラ)は大変だと思うけどね」

ヒートはケガ人続出で、試合ごとにラインナップを変更しながらの戦いを強いられているが、バトラーは「でも、それがNBAの一部なんだ」と受け入れている。

「誰と一緒であっても高いレベルでプレーできるから僕はここにいる。僕はスポほど大変じゃないよ。彼は選手それぞれがコートのどこにいて、いつどんなプレーをすべきか全部決めて、僕らに心地良くプレーさせなきゃいけないからね。でも、Gリーグから上がってきた選手や他のチームから来た選手が僕らの一員になり、スポの指示に応じて能力を発揮している。そんな姿を見るのが好きだし、彼らの『ネクスト・マン・アップ』のメンタリティを誇りに思うよ」

バトラーも右膝を痛めてしばらく欠場が続いた時期があるが、今はもう問題なくプレーできている。ケガ人はいずれ戻って来る。それよりも、ヒートが持つ不屈の闘志を新たに加わった選手たちが継承し、チームカルチャーとして守り続けていくことが大事。そんな戦い方ができた末の勝利には、1勝より大きな価値がある。