アドマイティスヘッドコーチ「勝負どころがどこかを彼は知っています」

1月8日、アルバルク東京はホームに川崎ブレイブサンダースを迎えた。第4クォーターにリバウンドからセカンドチャンスポイントを奪われ逆転を許すも、試合の中でリバウンドに対する意識を高く持ち直したことでリードを取り返し、75-64で新年初のホームゲームを勝利した。

トータルリバウンド数は41-44でわずかに上回られたが、課題点を洗い出して同じミスを繰り返さない修正力が勝利に繋がった。また、中地区上位の川崎のオフェンスを各クォーター20点以下に抑えたディフェンスについてはA東京の指揮官、デイニアス・アドマイティスも次のように振り返る。「川崎さんは得点能力のある選手がいるチームですので、パーフェクトではありませんがディフェンスは良かったと思います。ディフェンスから良い流れのオフェンスができた時間がかなりありました」

アドマイティスヘッドコーチが話すようにバスケットボールは良い守備ができると良い攻撃に繋がりやすい。第4クォーター序盤に逆転を許して以降は、強度の高いディフェンスをあらためて意識したことでタフショットを打たせ、ディフェンスリバウンドを回収してオフェンスに繋げるといった立て直しができていた。こうして流れを作り出したA東京は、高いシュート力を持つジャスティン・コブスのミドルシュートで逆転すると、残り3分で1ポゼッションリードの場面ではザック・バランスキーがマークにつかれながらも3ポイントシュートを決めるビッグプレーで点差を広げ、勝利を手繰り寄せた。

バランスキーは勝負どころでのシュートはもちろん、13cmの差がある川崎のマイケル・ヤングジュニアに対して身体を張ってマークし、同ポジションの吉井裕鷹とともにファウルをうまく使いながらオフェンスの芽を摘むなど、攻守で存在感を発揮した。バランスキーは言う。「オフェンスは落ち着いて正しい判断ができていました。シュートはいつも準備しているので、結果としてタイミング良く自分にボールがきて、気持ち良く打って入ったのはすごく良かったです。ディフェンスに関しては吉井と2人でファウルを10個使って相手を乗せないようにしようと話していました。(相手の)キープレーヤーを抑えつつ自分たちのやりたいバスケができたんじゃないかなと思います」

攻守で堅実なプレーを見せたバランスキーについて、アドマイティスヘッドコーチも「ザックはこのチームではベテランの一角です。勝負どころがどこかを彼は知っていますので、それを打ち切って決めたのは今日の試合の大きなプラスでした」と高く評価した。

「感謝の気持ちを持って自分たちも試合を楽しみながら頑張りたい」

アドマイティスヘッドコーチが話すようにバランスキーは、2015年にアーリーエントリーでトヨタ自動車アルバルク東京(現A東京)に加入して以降8年の間同チームでプレーしている。数多くの経験の中で培われたバスケットIQはコーチ陣からも高く評価されており、主にディフェンスの場面でその力が発揮されている。

「(ディフェンスについては)あまり考えていないんですよ。けど、駆け引きだったりIQの部分を大事にしていて、仲間がヘルプディフェンスに行って空いた部分を埋めることだったり、相手の癖や攻めたいと思う場所に入って、『ここにディフェンスいたら嫌だろうなー』って感じの先読みをよくします。ヘッドコーチも自分の判断とIQを信頼してくれています」

自分の感覚を大切にしているバランスキーはシュートにおいても同じだと話す。「自分の打てるタイミングで打つというのはどの場面でも変わりませんし、打つからには毎回入るだろうなと思いながら打っています。昨シーズンまでは『なんで打つんだ』と言われていましたが、決めて結果を残せば『まあ入るから良いか』と、言われなくなりました(笑)。そういう自分の感覚で打つことを大事にしています」

やるべき仕事をこなし、自分のフィーリングに合ったプレーでチームに貢献しているバランスキーだが、こだわりとして持つ点が一つだけあると言う。「試合の最後や勝負どころで出場できるかどうかは大事にしているポイントです。そういった時間帯で起用される選手はその日によって変わってきますし、ヘッドコーチが試合を見て判断しています。スタートとして出ることよりも、信頼を得てクラッチタイムにプレーできることが好きなので、今日は最後までコートに立って勝利に繋げられて良かったと思います」

こだわりとして持つ勝負どころでの起用に応え、クラブ最多記録に迫る9068人もの観客が集まった会場を沸かせたバランスキーは「こういう会場が選手にとって楽しくて幸せなシチュエーションです。NBL時代にそんなに人が入らなかった時も経験しているので、たくさんの人がきてくれるのは素直にうれしいです。ファンの方もしっかり楽しめる試合をやりつつ、感謝の気持ちを持って自分たちも試合を楽しみながら頑張りたいですね」と笑顔で語った。

また、今日の試合は全座席が完売しており、第1戦以上の観客が集まることが予想される。バスケットボールを初めて見る人たちの心をつかむのは、クラッチタイムで活躍するバランスキーかもしれない。