女子では珍しい、ワンハンドでプレーしコーチがほぼ指示を出さないスタイル
1月6日、Jr.ウインターカップは大会3日目を迎え、男女ともに3回戦、ベスト8と1日2試合をこなすタフなスケジュールで行われた。夏の全国中学バスケットボール大会でベスト8入りした相模女子大学中学部は、3回戦でGOLDEN PHOENIXに51-38、ベスト8ではJ,sphereを71-44で撃破し、夏を超える4強入りを果たした。
ベスト8の相手であるJ,sphereは昨年の大会3位が示すように全国屈指の強豪クラブチームだ。だが、相模女子は試合の立ち上がりこそ相手のインサイドアタックに苦戦し、追いかける展開となったが、ゴール下にボールが入ったらダブルチームなど人数をかけて防ぐと、そこから素早いローテーションで外角シュートも楽に打たせない機動力を生かしたディフェンスで流れを引き寄せた。そしてディフェンスリバウンドから得意の走る展開に持ち込み、第2クォーターを19-7と圧倒して前半で2桁のリードを奪った。後半に入っても、司令塔の竹内みやが12得点13アシストに加え159cmのサイズ不足を感じさせない9リバウンドと攻守に渡って大暴れした相模女子は、竹内を起点に走り勝つことでイージーシュートの機会を次々と作り出して快勝を収めた。
相模女子はコーチがほとんど指示を出さず、選手たちが笑顔で楽しんでプレーし、女子ではまだまだ珍しい光景だがワンハンドでシュートを打つ選手が大半を占めていた。田島稔ヘッドコーチはチームの方針をこのように語る。「私も考えは持っていますが、選手たち自身で試合の対策をしています。ミーティングで聞くと概ね的を射ているので分析する力がついています。スポーツは楽しいものです。そして楽しんでプレーする方がエネルギーは出るので、主体的にプレーさせることを意識しています。ほとんど指示はしていないです」
そして、ワンハンドシュートについては、ゴール下でのフィニッシュの精度向上などいろいろな効果があると見ている。「1年生で入学する時は両手でシュートを打っている生徒も基本的にはワンハンドに変えます。2、3日でとりあえず距離は届いて、あとは方向を調整していきます。(ワンハンドでプレーすることで)身体が斜め向きなのでペイントで色々なスキルをスムーズに出せるようになっています」
兄は福岡大大濠の川島悠翔「お兄ちゃんに負けないように頑張っています」
このように相模女子は選手の主体性を尊重し、型にはめないバスケットボールを展開している。そのスタイルを体現している一人が3年生の川島才佳だ。176cmとチーム一の長身である川島だが、プレーエリアは完全にアウトサイドが主体で、3ポイントシュートや外からの鋭いドライブを武器としている。3回戦では12得点9リバウンド3スティール、ベスト8でも14得点3リバウンド3スティールと中心選手として勝利に貢献した。
「みんなが一つの目標に向かって前日から準備をしてきました。対策を練って止められたのはよかったです。相模女子でこれまでの最高が全国ベスト8だったので、歴史を変えられたのはうれしいです」
このようにタフな連戦を勝ち抜けた喜びを語る川島は、自身のパフォーマンスについてこう続ける。「自分がボールをもらった時、3ポイントシュートを打つなど積極的に行けているのは良かったと思います。ただ、ボールをもらう回数が少ないですし、リバウンドも頑張っていきたいです」
また、176cmの大型ウイングとしてプレーしている点を聞くと、昔から今と変わらないと明かす。「小学生の時も全員でボールを運んで攻めるチームで、センターだけのプレーではなかったです。相模女子でも外のプレーをしていいと言ってもらっていて、自分も外からドライブするのが好きです」
川島の兄は世代屈指の大型フォワードである福岡大大濠の悠翔だ。「やっぱりお兄ちゃんはすごいので負けないように頑張っています」と尊敬している中でも、第1回大会にNLG INFINITYで出場し2位だった兄に対し「優勝して超えたい思いはあります」と語る。
相模女子が明日の準決勝で激突するのは全中の決勝トーナメント1回戦で56-54と競り勝った、京都精華学園中のメンバーを主体とする京都精華CLUBEとなる。リベンジを期す相手を撃破するには、相手の留学生センターに対し、川島がゴール下のディフェンスで奮闘し、オフェンスではスピードのミスマッチを突いて外から得点を奪うなど、プレッシャーをかけ気分よくプレーさせないことも大事な要素だ。
「お兄ちゃんのプレーを参考にしていたり、同じ大濠の湧川(颯斗)選手や広瀬(洸生)選手のスキルを見て学んでいます。オールラウンダーになっていきたいです」。こう理想像を語る川島だが、明日のベスト4でチームを勝利に導くには、文字通りオールラウンダーな活躍が求められる。