佐々宜央

12月に入って失速中「今の状況は自分自身にとって危機感しかないです」

宇都宮ブレックスは12月16日、敵地に乗り込んで川崎ブレイブサンダースと対戦。テンポよくパスを回されてからの高確率なアウトサイドシュートを食い止めることができず、86-97と大量失点で敗れた。

水曜ゲームに続いてエースの比江島慎がコンディション不良で欠場する中、宇都宮は序盤からニック・ファジーカスと外国籍2人を同時起用する川崎のビッグラインナップに攻守ともに苦しめられ、第1クォーターで13-23と出遅れる。だが、第2クォーターに入ると新戦力グラント・ジェレットの活躍や、渡邉裕規と喜多川修平のベテラン勢が効果的にシュートを決めるなど、セカンドユニットの奮闘によって残り3分に同点に追いついた。しかし、ここから川崎の藤井祐眞に高い決定力を見せつけられ5点ビハインドで前半を終えると、第3クォーターには川崎のトランジションを止めることができず17-28と一気に突き放された。最終クォーターも点差を1桁に縮めるなどの見せ場を作ることなく、そのまま敗れてしまった。

宇都宮の佐々宜央ヘッドコーチは、こう試合を振り返る。「出だしで向こうに流れを持っていかれ、(比江島)慎がいなくて悪い雰囲気になりそうなところでチーム全体としてファイトバックして同点まで戻せました。ただ、全体を通して相手に3ポイントシュートを決められてしまった。ニックのところを抑えるのをメインにしていましたが、バランスが悪かったですし、途中で修正するのを僕がためらってしまったところがありました」

指揮官が語るように宇都宮は川崎の要であるファジーカスをフィールドゴール10本中4本成功の9得点に抑えたが、一方で7アシストを献上したように彼を起点とするボールムーブを止められなかった。その結果、3ポイントシュートを29本中13本成功(成功率44.8%)と高確率で決められてしまった。

これで宇都宮は10勝10敗の勝率5割に逆戻り。スタートダッシュに失敗した後、代表ウィーク明けの11月に5戦全勝と盛り返したかに見えたが、12月に入ると横浜ビー・コルセアーズ戦の連敗もあり、2勝4敗と失速している。

まだ、シーズンは3分の1を終えたばかりと先は長く、目先の成績に一喜一憂する段階ではないかもしれない。しかし、佐々ヘッドコーチは「今の状況は自分自身にとって危機感でしかないです」と言い切り、結果を出せていないことへの責任は自分にあると強調する。「チャンピオンチームを受け継がせてもらっている立場であることを認識しています。今は一つでも勝ちを増やせるように必死でやっていくしかないです。だからこそ、水曜日の秋田とのゲームは戦い切れずに終わって残念な形でした。戦い切れていないのが僕にとって一番嫌です。やることをやっていくしかない。ファンの方たちには期待してもらっているのに結果を出せずに申し訳ないです」

グラント・ジェレット

希望の光となる新戦力ジェレットの活躍「チームで勝つことをメインに考えています」

比江島の不在は大きな痛手で苦しい状況だが、その中で大きな光となっているのが水曜日にデビューを果たしたばかりのジェレットで、この試合では28得点11リバウンド4アシストの大活躍だった。「グラントが実際に加わったのはアウェーの富山戦での現地合流でした。こういった活躍をしてくれると、彼にとってだけでなくチームとしても使っていけると自信になっていきます」

こう佐々が語るようにチーム練習ができていない状況でもうまくフィットしているのは今後に向けてポジティブな材料でしかない。そしてジェレット本人は、これからもっとプレーの質を高めていけると自信を見せる。「中でも外でもプレーできるのが自分の強みです。自分にとって水曜日は、2月以来となる試合でしたので、まだ調整しているところです。チームメートとの連携もアジャストしているところで、チームで勝つことをメインに考えています」

彼にとってBリーグのプレーはシーホース三河に所属した2018-19シーズン以来となるが、日本でのプレーはずっと待ち望んでいたと明かす。「前回、Bリーグを経験してから少しでも早くまた日本でプレーしたい思いは強かったです。ヨーロッパで経験を積んだ後、日本という国の素晴らしさ、Bリーグがプロフェッショナルで素晴らしいリーグであることが印象に残っていました。また、戻ってくることができてうれしいです」

『ブレックスメンタリティ』という言葉に代表される40分間ハードワークを継続する姿勢は、もちろん今のチームにも根付いており、宇都宮はこの試合でも点差が大きく開いた終盤でも強度を落とさずプレーを続けた。このプロフェッショナルな姿勢には佐々も敬意を持っているが、どんな状況でも結果を残すのが自分たちの責務と続ける。「選手たちはハードワークしてくれていますが、頑張ったけど負けてしまって仕方ないと、負け犬みたいにはなりたくない。それは選手たちに言いました。やれることは毎日ハードワークを続けていくことです」

そして、佐々ヘッドコーチは自ら率先してハードワークを実践していく意味も含め、ベンチにおける自身の振る舞いも変えた。シーズン序盤はアシスタントコーチ陣にもどんどん声を出して欲しいとの思いもあり、琉球ゴールデンキングスで指揮を執っていた時に比べるとおとなしかったが、今の佐々は昔の姿に戻っている。「以前は静かな自分でしたが、今は前のように自分でどんどん声を出してチームを鼓舞していく。その中で冷静に判断ができればいい。慎がいないから負けると言われるのは嫌なので明日、再びチャレンジしてどうにか1勝をもぎとりたいです」

今日の第2戦に負けると宇都宮は再び借金生活に突入してしまう。エース不在でも勝利できる底力があることを証明しないといけない、宇都宮にとっては大きな踏ん張りどころとなる大事な試合だ。