「最初の試合で出だしがすごく大事と言いながらコートに入りました」

第89回皇后杯は14日からファイナルラウンドが始まり、初戦となる準々決勝で10連覇を目指すENEOSサンフラワーズは92-73と三菱電機コアラーズに快勝した。

ENEOSは開始3分まで相手を無得点に抑えたように、自分たちの根幹であるディフェンスからリズムを生み出す。その結果、ディフェンスリバウンドから走る得意の展開に持ち込むと、第1クォーターだけで9アシストとチームオフェンスが機能し23-16と先手を奪う。その後もENEOSのペースで試合は進み、終わって見れば4つのクォーターすべてでリードを奪う盤石の試合運びで、現在Wリーグで7勝1敗と好スタートを切っている三菱電機を寄せ付けなかった。

この試合、ENEOSの宮崎早織は21得点10アシスト4リバウンドと活躍。特に第1クォーターで6得点7アシストと、チームに流れを引き寄せる立役者となったが、試合の立ち上がりを次のように重要視していたと振り返る。

「ファイナルラウンド最初の試合で出だしがすごく大事とみんなで言いながらコートに入りました。スタートで出ている5人が、そこを意識して最初の3分間を頑張れたと思います」

また、シーズン開幕当初と比べると見違えるようにボールムーブが増え、各選手がボールに絡む流動性の高いオフェンスになっている点について聞くと、大黒柱である渡嘉敷来夢の言葉が大きかったと話す。

「リーグ序盤は代表組が開幕直前の合流となり、やっぱりタクさん(渡嘉敷)のところを意識することで良くも悪くもボールが止まってしまうことがありました。そこでタクさんが『自分のことを見過ぎなくていいよ。打っていいよ』とずっと声をかけてくれていました。その結果、アウトサイドの選手たちが思い切りシュートを打てることができて、良い結果になったと思います」

自身に固執し過ぎることをやめさせた渡嘉敷は、持ち味の一つとしているアシスト力も発揮し、9得点16リバウンド9アシストとトリプル・ダブルまであと一歩のスタッツを残した。

「私が打つことでよりタクさんのところが空くと思うので次の試合も続けていきたい」

宮崎自身で言うと、3ポイントシュートを6本中4本成功と高確率で沈めたことが光った。「空いたら打つとずっと決めています。やっぱり今日も私のところはアンダーで守ってきますし、その中で思い切り打てたこと。それが得点に繋がってチームに流れを引き寄せられたことは良かったと思います」

宮崎の持ち味はスピードを生かしたドライブであり、相手もそれを警戒して下がって守るケースが多い。そこでスペースがあるからと3ポイントシュートを打って決めれば問題はないが、外した場合は相手の思う壺になる。だからこそ、外から打つべきか悩ましいところだが、渡嘉敷の言葉が後押しになったと宮崎は語る。

「代表の時はアンダーで守られると打ってしまおうと思っていますが、ENEOSに帰ってくると狙いどころがあるので、自分で打つ選択肢の優先度は低かったです。それでも(ENEOSに加入してから)9年間ずっとアンダーされているので、焦らずに気持ち良く打とうと思ってやっています。タクさんも『ユラ(宮崎)は積極的に打ったほうが良いよ』と言ってくれているので、そのおかげで今日は打てました。私が打つことでよりタクさんのところが空くと思うので次の試合も続けていきたいです」

これでENEOSは、皇后杯10連覇の偉業まであと2勝となった。これから10連覇について否応なしに周囲から聞かれることになるが、宮崎はあくまで次の試合に集中していく。「10連覇できるかと注目していただけるのはうれしいですけど、選手たちは一戦一戦が勝負と思っています。目の前の試合を大事にしていこうと話し、最後に10連覇を達成できたら良いなと思います」

直近のリーグ戦でENEOSは、中心選手の岡本彩也花が今年の3月に負傷した前十字靭帯断裂から復帰したが、佐久本智ヘッドコーチによると1試合で5分間のみの限定的な起用しかできない状況だ。10連覇のためには宮崎が引き続きエースガードとしてチームを牽引していくしかない。彼女ならそれが可能であることを証明した一戦となった。