金近廉

「最後、相手がしんどくなってくるところで自分たちが走れたのが良かったです」

大学バスケのインカレは12月10日に準決勝が行われ、東海大が日大との接戦を62-56で制し3年連続の決勝進出を決めた。

序盤、東海大は日大のデイビッド・コンゴローにゴール下を制圧され15-22と先手を取られたが、金近廉を中心にチーム全員でプレッシャーをかけることでアジャストし、30-32と盛り返して前半を終えた。

後半に入ると互いに相手のディフェンスを攻略できずハーフコートオフェンスで得点が入らない膠着状態となる。だが、その中でも機動力で勝る東海大がタフショットを打たせた後のロングリバウンドからトランジションで得点する機会が増え、わずかにリードを奪う。そして終盤には金近が3ポイントシュートを沈め、松崎裕樹がオフェンスリバウンドからのセカンドチャンスを決めるなど、ここ一番で中心選手が仕事を遂行した東海大が粘る日大を振り切った。

東海大の金近は13得点3アシストに加え5リバウンド3ブロック2スティールと攻守に渡って大きなインパクトを与え、大学界屈指のオールラウンダーの本領を遺憾なく発揮した。試合序盤には豪快なダンクを叩き込むなど、196cmのサイズながらガードと遜色ないクイックネスと跳躍力を兼ね備える傑出した身体能力の持ち主は、このように試合を振り返る。

「昨日(70-65で中央大に勝利)も今日も、相手に流れが行きかけて何度も苦しい時間帯が続きましたが、僕たちは60点以下に失点を抑える目標があります。それに向けて全員が同じ意識でディフェンスの強度を保ちながら40分間しっかり戦えました。そして最後、相手がしんどくなってくるところで自分たちが走れたのが良かったと思います」

特に後半は互いにオフェンスをうまく展開できない我慢比べとなった。負けたら終わりのトーナメントにおいては大きなプレッシャーがかかる状況だが、それでも東海大が最後まで集中力を維持できたのは、これまでの敗戦をしっかりと糧にできているからだ。金近は、ディフェンスへの意識に自信を見せる。

「春のトーナメント、秋の関東大学リーグ戦と負けた試合は自分たちのオフェンスがうまくいかない時にどんどんオフェンスに意識がいってしまい、そこからディフェンスで崩れました。それを経験し、全員がディフェンスこそが一番重要と分かっています。陸さん(陸川章ヘッドコーチ)も『点を入れられなければ勝てる』と言ってくれています。オフェンスがうまく行っていない時も全員が同じ意識でディフェンスに集中していました」

金近廉

「弱いと言っていた人たちも応援してくれたらすごくうれしいです」

金近個人でいうと、故障者の影響によりインカレでは4番ではなく5番ポジションでプレーしている。本来のポジションではない中、今日は大学界を代表するビッグマンのコンゴローを13得点に抑えた。ただ、これはチーム全員で守った成果だと強調する。「どうしようもないところはありますが、チームで守ることを徹底しています。リバウンドを後ろからペリメーターの選手が取ってくれることを信じて、僕はデイビッドを抑えることを意識しました。それが1試合を通してできたのは良かったと思います」

そしてオフェンス面では「僕の方がスピードはあるので外でアドバンテージがあります。今日はそれがうまくハマりました」と語るように、ここ一番でコンゴローのマークを振り切って値千金の一撃を沈めた。

振り返れば今シーズンの東海大の下馬評は決して高くなかった。というのも、1年生から主力として活躍し4年間の在学中に2度の優勝を含む、3度のインカレ決勝進出をもたらした大倉颯太、佐土原遼、八村阿蓮の強力トリオが卒業し、河村勇輝もプロ転向でチームを離れたからだ。金近も「去年の4年生と勇輝さんは、僕らにとってすごく大きい存在でした。周りの人たちから東海は弱くなったと言われました」と語り、実際に春のトーナメントは早々に敗退と結果を残せずに終わってしまった。

それでも「陸さんは春から『このチームは強い』と言い続けてくれて、そこに僕たちが段々と追いついてこれました」と言うように、、指揮官の熱い思いに選手たちは応え、着実にチーム力を高めていった。その結果、秋の関東リーグ戦は序盤こそ苦しんだが、後半戦に連勝を重ねて3位に食い込み、その勢いをインカレに繋げて再び決勝に戻ってきた。

「去年の悔しい気持ちは、同じ舞台でしか晴らせません。明日は去年以上の最高のゲームをして借りを返したいです」。このように明日の大一番への意気込みを語る金近は、最後にこのように締めくくった。「弱いと言っていた人たちも、僕たちがこうして勝ち続けたことで明日の試合を応援してくれたらすごくうれしいです。期待に応えられるように精一杯やっていきたいです」

心技体が充実した現在の東海大は、昨年の雪辱を果たすための準備が整っている。

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