アキ・チェンバース

文=丸山素行 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

「良いディフェンスをすると他の4人も感化される」

千葉ジェッツは週末の大阪エヴェッサ戦に連勝し、好調をキープしている。だが前半で20点差をつけた第1戦と違い、第2戦は前半を終えた時点で1点リードと苦戦を強いられた。それでもハーフタイムでディフェンスマインドを取り戻したことでオフェンスも活性化し、結果的に後半を46-25と圧倒した。

指揮官の大野篤史は「後半にしっかり修正して、ディフェンスから自分たちのトランジションオフェンスに持って行けたのが勝因」と語り、あらためて千葉がディフェンスのチームであることを再認識した。

そして3本の3ポイントシュートをすべて沈め、13得点4アシスト4スティールと攻守両面で存在感を放ち、勝利に大きく貢献したのがアキ・チェンバースだった。190cmと高さもあり、フィジカルも強く、素早さも兼ね備えるアキの存在は千葉のトランジションを生むスイッチと言える。

「ディフェンスでチームに貢献できたと思います。一人の選手が良いディフェンスをすると、他の4人の選手も感化されて、よりエナジーが出る時がありますが、それができた試合だったと思います」とアキも自身のディフェンスに及第点以上を与えた。

アキ・チェンバース

「ベンチやファンの皆さんが盛り上がった時」に喜び

ケガのため小野龍猛が戦列を離れたこともあり、アキはここ8試合で先発出場を続けてプレータイムも増えている。「ディフェンスですごく存在感がありますし、得点も最近はオープンスリーがよく入るので助かります。シュートは水物なので、自信を持って打っているかどうかで判断していますが、ディフェンスが良いのでプレータイムが伸びています」と大野ヘッドコーチはアキへの信頼を語る。

そのアキも、「チームが勝つ為にヘッドコーチが考えた一番良い方法、良いやり方で起用されていると思うので。いつでも活躍できるように準備しています」と指揮官への信頼を口にした。相思相愛のその関係性が、アキの好調さを後押ししている。

感情を表に出すことはあれど、アキはどちらかと言えば寡黙なタイプで、自分のプレーに一喜一憂しない。アキにとって最も気持ちが昂るのはどのようなプレーをした時なのだろうか。アキにそれを問うと、照れ笑いを浮かべ「求めているような回答にならないけど」と前置きしてこう答えた。

「特にこれというのはないんだけど、チームバスケットがしっかりとできた時や成立した時かな。自分だけじゃなくチームが良いプレーをした時に、ベンチやファンの皆さんが盛り上がった時は一番うれしく感じる」。決して口数は多くなくても、こうしたアキのチームファースト、ブースターファーストの精神はファンに伝わっているはずだ。

アキ・チェンバース

日本代表予備登録メンバー24名に入り、さらなる飛躍へ

昨日発表されたワールドカップのアジア予選Window5の予備登録メンバー24名にアキは名を連ねた。トランジション主体の千葉ジェッツの派手なゲーム展開を黒子として支えるアキの堅実なパフォーマンスは、代表スタッフにもしっかり評価されていたということだ。フリオ・ラマスはシューターに様々な役割を求める指揮官だ。ディフェンスをベースとして常にハードワークを保証するアキのスタイルはラマスの好みに違いない。

ただ、ここから代表で生き残っていくには、代表合宿でのアピールはもちろん、千葉での1試合1試合が大事な勝負となる。開幕からここまでホーム開催が多かった千葉だが、今後2節連続でアウェーでの戦いが待ち受ける。「自分のプレーで(アウェーの観客を)黙らせることでモチベーションを上げるという方法もありますが、ファンの方がたくさん応援してくれるから、やっぱりホームの方が戦いやすいです」とアキは言う。

2ゲーム差で千葉の上を行く栃木ブレックスは、現在アウェーで負けなしと無類の強さを誇っている。敵地での戦いと言えど、栃木の背中をとらえるには必勝が求められる。

「1試合1試合集中して、エナジーを出して試合に臨むだけ」。そうシンプルに意気込むアキは、これからも千葉の連勝街道を支えていく。