ケンバ・ウォーカー

写真=Getty Images

勝負どころではパーカーが組み立て、ケンバは得点に専念

新ヘッドコーチにジェームズ・ボレゴを迎え、チーム改革が進むホーネッツ。その改革は若手に切り替えての再建ではなく、トレードの噂が絶えなかったエースのケンバ・ウォーカーをあらためて中心に据える構図を維持しながら、ケンバをさらに輝かせる形になっています。試合のペースを上げ、平均得点が6点も上がったホーネッツ。その6点はケンバの平均得点の向上とリンクしています。

昨シーズンの平均22.1点から今シーズンは平均28.7点と6点近く平均得点を上げ、得点王争いに割り込んできたケンバですが、その要因はシュートアテンプトの増加です。21本以上のアテンプトはリーグでケンバのみで、特に3ポイントシュートは平均3本も増え、チーム最大の武器になっています。一方でケンバはアシスト数も6を超えており、状況判断をせずに打ちまくっているわけでもありません。キャッチ&シュートの3ポイントシュートは昨シーズンよりも1.1本増え、またフリーの状況も1.1本増えており、試合の中で時にケンバがシューター的な役割になっているのが今シーズンの大きな変化の一つです。

ここで重要な役割を担っているのはボレゴが古巣スパーズから勧誘してきたトニー・パーカーです。基本はケンバの控えですが、勝負どころでは同時起用し、パーカーをポイントガードにしてケンバを得点に専念させます。ビッグマンを多く起用してインサイドの強さで勝負していたホーネッツですが、今シーズンはセンター陣も3ポイントシュートを放つようになり、またマイケル・キッド・ギルクイストをセンターとして起用した3ガードのスモールラインナップでより動き回ることを好むようになりました。

ホーネッツにきて若返ったかのようなパーカーが加わり、ガード陣中心のオフェンスになったことで昨シーズン37.2回だったドライブ数がリーグ最高の51.7回まで上昇し、チームのアシスト数が3.2本増えたのです。

昨シーズンはケンバ以外のドライブがほとんどなかったのに対して、パーカーは平均10.4回のドライブを仕掛け、4.3アシストを記録しています。ベテランのパーカーが自ら仕掛けることから始まるゲームメイクによって、ケンバがパスを受けるのはディフェンスが少し乱れてからに変化しました。ケンバにとってはこの「少し」で十分。フリーと判断すれば躊躇わず3ポイントシュートを打ち、マークがいても巧みなハンドリングで剥がせば、スモールラインナップによって広くなったインサイドでシュートを決めていきます。

サイズの小さいパーカーとケンバを並べることはディフェンス面で大きな不安がありましたが全員の運動量でカバーし、それ以上に多くの得点をもたらすことで上回っています。

ケンバが受け取ったパス数74.3本は昨シーズンとほぼ変わらないのですが、エースのケンバから始めるのではなく、ケンバにフィニッシュさせるシステム変更がシュート数を増やしました。それは同じポジションになるマリック・モンクやジェレミー・ラムのシュート数も増やすことに繋がっており、チーム全体でガード陣に得点を取らせるためのプレーができています。

一見すると好調のケンバに頼っているようですが、スクリーンやパスの中継、シューター役など各ポジションの役割分担がハッキリしたことで、全員がプレーにかかわるようになったことがホーネッツ好調の要因です。

しかし得失点差は平均4.6点で、リーグ8位と好調ながらホーネッツは5割の壁をなかなか越えられません。これまで7勝のうち6勝が10点以上の得点差で勝っており、点差が1桁の試合は1勝6敗と勝負弱さが目立つ結果になっています。

バックスとの開幕戦では一時20点のビハインドを驚異的な粘りで追い上げながら、逆転をかけたケンバのレイアップが決まらず、ブルズ戦では同点で迎えたラストプレーでフリースローを与えてしまいました。サンダー戦では19点のリードを得ながら火がついたサンダーの勢いを止めることができず。そしてシクサーズとの3試合はすべて最後の1本を決めていればというシーンの連続となっています。

10月27日の対戦では37点を奪ったケンバでしたが、第4クォーターはフィールドゴール10本中3本しか決まらず、同点の残り3分からチームは4点しか奪えず2点差で敗れると、11月9日の対戦では第4クォーター開始時点の11点ビハインドを一気に追い上げていきながら、残り1秒でのケンバのシュートが決まらずオーバータイムに突入。残り17秒で同点を狙ったケンバの3ポイントシュートがブロックされ敗戦となりました。11月17日の対戦ではケンバはキャリアハイの60点を挙げる大活躍ながら、オーバータイムの残り15秒で勝ち越しを狙ったシュートはジミー・バトラーにブロックされ、さらにそのバトラーに決勝3ポイントシュートを決められてしまったのでした。

とにかく勝負弱いホーネッツ。大敗したのは2試合のみで4点差以内で負けた6試合はどれも勝っていておかしくないものばかり。唯一の接戦での勝利も前半20点リードしながら後半になると得点が取れなくなり、残り12秒で追いつかれながら何とかフリースローで逃げ切ったもの。勝負どころでエースのケンバに打たせる形をしっかり作ることはできているのに、決めきれないもどかしい試合が続いています。

エースとして常にホーネッツの主役を張ってきたケンバがさらに輝きを増す今シーズン。その一方でチームの勝利に対しての責任も強くなりました。接戦を制する勝負強いエースになれるかどうか、ホーネッツの改革はケンバの勝負強さというさらなる成長をも求めています。