田中大貴

第3クォーターの出だしで14-0のビッグラン

アルバルク東京vs茨城ロボッツの第1戦は、序盤に大量リードを奪い、後半の出だしでビッグランを作ったA東京が88-56で勝利した。

序盤からA東京は球離れ、スペーシングが良く、ボールがよく回った。そして、ドライブからのキックアウトを繰り返すことでズレを作り出し、高確率でシュートを決めていった。また、インサイドにボールを入れた際にダブルチームを仕掛けてくる茨城ディフェンスを逆手に取り、すぐに逆サイドへパスアウトをしてオフェンス優位な状況を作り出した。ライアン・ロシタ―を筆頭にオフェンスリバウンドで6-0と上回り、安藤周人が3本すべての3ポイントシュートを沈め、チームでも8本中5本と高確率で長距離砲を沈めたA東京が25-10と最高のスタートを切った。

その後、常に2桁のリードを保つ安定感を見せていたA東京だったが、第2クォーター終盤に3連続で3ポイントシュートを射抜かれ、点差を1桁に戻されてしまう。それでも、田中大貴がラストポゼッションで3ポイントシュートのブザービーターを沈めたことで、再びリードを2桁に乗せて後半を迎えた。

そして、A東京は後半の立ち上がりで勝負を決めにいった。インサイドではなく、ガード陣にダブルチームを仕掛けてくるギャンブル的なディフェンスに対し、ジャスティン・コブスが冷静にパスを供給して再び数的有利な状況を作り出す。ハンドラーのコブスはボールを失うことなく自らも得点し、ディフェンスを引きつけてはイージーシュートをお膳立て。オフェンスでリズムをつかんだA東京はディフェンスの強度も増し、1on1で抜かれずに素早いローテーションで次々とタフショットを打たせた。

こうして攻守が噛み合ったA東京は後半開始約3分間を14-0と一気に突き放した。その後もディフェンスの集中力を切らさず、失点を50点台に抑えて、そのまま逃げ切った。

オフェンスリバウンドで6-20と大きく水をあけられ、32点差の大敗を喫し、茨城の指揮官、リチャード・グレスマンは「今シーズンで最も悪い試合になってしまった」と総括した。

アルバルク東京

週末の連戦「それがこのリーグの一つの難しさ」

スコアだけを見ればA東京の完勝だったが、ヘッドコーチのデイニアス・アドマイティスが「特に第2クォーターの終わり、大貴の3ポイントシュートで2桁リードを守りましたが、点差がある中で詰められたあの場面は非常に危険でした」と振り返ったように、田中のブザービーターは試合を左右する1本だった。

田中は腰痛から2試合を欠場し、前節の横浜・ビーコルセアーズ戦もベンチからの出場となった。この茨城戦で先発に復帰したが、田中は決してコンディションが万全ではないと明かした。

「少しずつ良くなってはいますが、正直、フルのコンディションを考えたら半分もいっていないです。早く安定した自分のリズムをつかんで、安定したパフォーマンスを発揮して、今までのようにチームに良い影響をもたらしたいです」

そう自身で言うように、ここまでの田中は得点やフィールドゴール成功率など、主要スタッツはキャリアワーストに近い数字となっている。それでも、この試合ではハンドラーとしてディフェンスを崩すきっかけを作り、大事な場面で3ポイントシュートを沈めるなど、スマートな姿が見れた。田中も「徐々に慣れてきた部分もあって、今日は今までに比べると良かった」との自己評価を下した。

今シーズンのA東京は2戦目に勝ち切れないことが多く、同一カード連勝を達成したのはわずか1回のみだ。クラブ間の戦力差は年々埋まってきており、それに比例して同一カード連勝の難易度も上がっている。田中も「負けた側が1戦目以上に気持ちやエネルギーを出してくるのは当たり前で、それがこのリーグの一つの難しさ」と言い、同一カード連勝の難しさ、連戦が基本となっているBリーグの仕組みについて言及した。そして、それを踏まえた上で「相手以上のエネルギーを持って2戦目に臨み、スマートにプレーできていないことが今のウチの課題」と、客観的に語った。

A東京は今回の勝利で8勝4敗とし、東地区3位と好位置につけている。ただ、連覇を達成した常勝軍団に戻るには同一カード連勝が一つの鍵となっており、特に大差で勝利した後の2戦目が重要だと、田中は言う。「初戦でプライドを傷つけられた相手が2試合目にどう臨んでくるかという話です。それが同一カード連勝を難しくしている理由にも繋がります。それでも、僕らは同一カード連勝のスタートを切るためにもしっかり戦います」

敗れた相手以上のエネルギーを持って迎え撃つことは、口で言うほど簡単ではないが、リーグ屈指の強豪であり続けるにはそれを実践するしかない。今日の第2戦の出来が今後のA東京の未来を左右するかもしれない。