ベン・シモンズ

一昨シーズンのプレーオフを機に決裂、『遺恨対決』は一触即発に

現地11月22日にはセブンティシクサーズvsネッツの一戦が行われる。ベン・シモンズにとっては、シクサーズを退団してから初めてフィラデルフィアでプレーする試合となる。

シモンズとシクサーズには『因縁』がある。彼が最後にシクサーズでプレーしたのは2020-21シーズンのプレーオフ。ホークスに敗れたカンファレンスセミファイナルでのシモンズの出来は極めて低調だった。GAME7までもつれた試合で平均9.9得点、最後の試合は13アシストこそ記録したものの得点わずか5。シュートに自信を失い、ゴール下でフリーにもかかわらず自分で打たずにパスを出した。しかもシリーズを通してフリースローは45本中成功わずか15本と、ホークスの『ハック・ザ・シモンズ』に完全にリズムを狂わされた。

完全なスランプに陥っていたシモンズは、プレーオフ敗退の戦犯とされたことに嫌気がさしてオフに球団との連絡を絶った。翌シーズンのトレーニングキャンプには遅れて参加し、やる気のない態度や練習後のハドルには加わらない姿が指揮官ドック・リバースの逆鱗に触れて、練習から追い出されもした。

シモンズは「精神的にプレーする準備ができていない」と訴えて開幕後もプレーを拒み、球団が手配したメンタルヘルスとの専門家と会うことを拒否して、罰金を払いながらチームと距離を置き続けた。シーズン途中にネッツとのトレードが決まるまで、シモンズとシクサーズの関係は最悪なものとなった。

シクサーズ側から見れば、ジョエル・エンビードとともに『チームの顔』だったシモンズがチームとフィラデルフィアの街に対して裏切りを働いたことになる。逆にシモンズはネッツ移籍が決まった後、「僕は助けを必要としていたけど、誰も手を差し伸べてはくれなかった。わざと僕につらく当たっていると感じた」と率直な気持ちを語っている。

その両者が激突する。選手はプロフェッショナルとして気持ちを切り替えるだろうが、フィリーのファンはシモンズに手荒い歓迎をするはずだ。11月20日の会見でその心境を問われたシモンズは、「プレーする準備はできているよ」と答えた後に「何かあるんだっけ?」と言って報道陣を笑わせた。

「敵対心は落ち着いただろうか?」との問いに「フィリーで?」とシモンズはジョークを重ねたが、「何が起きるか覚悟はしているよ。それもバスケの一部だ。フィリーはスポーツの街で、ファンは本当に熱狂的なんだ。僕はそういうところを尊敬している。(渡邊)雄太とも、そんな話をしていたんだ」と続けた。

そして彼は、今度は真面目にフィラデルフィアについての思いを語り始めた。「僕は18歳でフィリーに来た。大人になって最初に暮らした場所だから愛着がある。みんな知らないだろうけど、仲の良い友達の多くはフィラデルフィアの出身で、僕の兄もまだそこに住んでいる。何が起きたとしても、僕はあの街に今でも愛着がある。だからあそこでプレーするのは楽しみだよ」

シモンズは開幕からスロースタートだったが、ここに来て調子を上げている。20日のグリズリーズ戦ではフィールドゴール13本中11本成功の22得点、8リバウンドに5アシストと、攻守両面で機能するポイントセンターとして復活を印象付けるプレーを見せた。一方、一緒にシクサーズを引っ張ってきたジョエル・エンビードは左足を痛めており欠場の見込み。両者のマッチアップが見られないのは残念だが、それを差し引いてもシクサーズとシモンズの激突は見逃せない。