山田愛

山田愛はキャプテンを務めた3年時に桜花学園で『高校3冠』を達成し、Wリーグの名門であるJX-ENEOSサンフラワーズ(現ENEOSサンフラワーズ)でも日本一を経験した。エリート街道を突き進んできた山田だが、以前から抱いていた海外挑戦を実現すべく、2019年にENEOSを離れ、オーストラリアリーグのオルベリー・ウォドンガ・バンディッツと契約を結んだ。新型コロナウイルスの影響で契約は白紙となったが、昨シーズンに再契約を結びオーストラリアリーグデビューを飾った。チームは優勝し、個人でもトップ5に選出される最高のシーズンを送ったが、この度スイスリーグのNyon(ニヨン)への入団を発表した。歩みを止めない山田にその思いを聞いた。

「海外への意識が高まっているとは感じます」

──スイスリーグへの挑戦が決まりましたが、海外でやり続けることへのこだわりについて聞かせてください。

冒険みたいに先が分からないこのワクワク感がすごく好きで、めちゃくちゃこだわっています。スイスはフランス語で多分言葉も分からないですし、どんなところかも分からないので現地に行って感じるものがたくさんあると思います。バスケットや文化での発見など、すごく楽しそうだなって毎回思っていて、そこが海外でやりたいという思いに繋がっています。

──ここ数年で女性プレーヤーで海外に挑戦する選手が増えてきた印象があります。そういった方々とコミュニケーションを取ったり、海外にチャレンジしたい人たちから相談が来たりしますか?

海外への意識が高まっているとは感じますね。私も行ってみたいって言う人も多いですし、実際にアメリカの高校や大学に行っている人もたくさんいると思います。町田瑠唯さん(富士通レッドウェーブ所属)もWNBAに行きましたし、 安間詩織さん(現Umana Reyer Venezia)、オコエ(桃仁花)選手もギリシャリーグへ移籍しましたよね。海外に出ていく選手が増えたとはすごく思います。

──勝手なイメージですが、女性のプロリーグはサラリーが低いように感じています。実際のところオーストラリアやスイスはどうでしょう?

正直、めちゃくちゃ低いです。どんどんステップアップしていけばお金も後でついてくるとエージェントには言われています。ただ、私は日本代表でもないので低いですね。家や保険や車は支給されるので最低限暮らしていけますが、もらえる額としては日本の方が高いですし、やっぱりサラリーは低いです。ちなみにビザやお金の話はエージェントを挟まないとしてはいけないし、何も答えないでと言われています。

山田愛

「やっぱり人に恵まれているなとは思います」

──冒険心でワクワクすると言いつつも、現実にはいろいろな困難もあると思います。大変だったことはありませんか?

小さなことが積み重なり「大丈夫か私!?」って、意味もなく泣けてくることがありましたね。日本語みたいに細かいことを言い切れないストレスや文化が違うストレス。それが当たり前だし、楽しいけど、やっぱりしんどい時もあります。そうなった時に相談する人がいないし、どうしたらいいか分からなくて泣けてくることはありました。

エピソードで言えば、髪の毛を染めに行って「綺麗なブロンドにしてください」と言ったら、「2回ステップを踏みます」と言われて1週目に150ドル払ったんです。それで、2週目に行ったら「今日は高くなるよ」と言われて、450ドル払いました。誰が髪の毛1回染めるのに6万円払えますかと(泣)。メンタルトレーニングもしているので、「ここに来てるのは自分がバスケットをしたいから来ているんだ」と言い聞かせて、回復しました。

──悪いことばかりではなく、ポジティブなエピソードはありませんでしたか?

メルボルンにいる時にできたオーストラリアのママがいるんです。私の誕生日の時は毎回3時間ぐらいかけて来てくれて、私の分もホテルを取って一緒に泊まって、朝ご飯を食べてどこかに出掛けたり、本当のお母さんみたいにしてくれるんです。私がオーストラリアを離れる時も、みんなを呼んでパーティーをしてくれたり、仲間に私のことをたくさん話してくれたり。このオーストラリアのお母さんみたいな人を含め、本当にいろいろな人に助けられて、やっぱり人に恵まれているなとは思います。

──冒険をするからこその出会いなんでしょうか?

何か自分が行動していたら、ふと現れてくれるんです。なので、出会いは必然です(笑)。

1人で行動するから何にも守られていなくて、右左も分からないんですが、「愛ちゃんは好きをずっと追い求めていて、そこが真っすぐだから応援したくなる。とことん好きを追いかけてほしい」って言われました。私は本能でずっとやってきたタイプなので、そうやって言ってもらえてすごくうれしかったです。私の周りにいてくれる人はいつも応援して助けてくれるので、1人で行動してみると本当にみんなに支えられてここまで来たんだなって思います。

──日本で影響を受けた人はいますか?

アルさん(ルンゲ春香/ソシオ成岩スポーツクラブ所属、JBA愛知県U14DC女子コーチ)は師匠です。私がなりたい人間像を追行している人で、迷った時は「アルさんだったらどうするかな」って考えることもあります。バスケットができたり、お金持ちだとしても、中身に共感できなかったら私はついていかないので、私もそういう人でありたいと思って人への接し方とか、自分への規律とか、人生の挑み方じゃないけど、そういう部分ですごい影響受けていますし、尊敬しています。

吉田亜沙美さん(元JX−ENEOSサンフラワーズ)はレジェンドでありながら真っすぐな人間で、やっぱりすごいと思います。宮崎早織(現ENEOSサンフラワーズ)や(馬瓜)エブリン(トヨタ自動車アンテロープス)とか、まだまだ日本のトップでやっている人たちが同級生なので、彼女たちへのリスペクトもすごくあります。上の方だと安間さん、下だと山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)などすごいと思うメンバーはたくさんいるので、自分は自分の道をしっかり歩んでいきたいとすごく思います。

──では最後に日本で応援してくれてるファンの皆さんにメッセージをお願いします。

いつも本当に応援ありがとうございます。なかなか日本で直接プレーを見せることができないのが本当に残念です。「海外でバスケットをする」という、やりたいことを追い続けていられる環境があることが本当にありがたいですし、いつも応援してくれている皆さんがいるからこそ私も頑張れると本当に思っていますので、これからも応援をよろしくお願いします!