チュマ・オキキ

ディフェンスで耐えて耐えて、小さな優位を積み上げる『我慢の勝利』

11月9日、マジックがホームでマーベリックスを破った。マブスはクリスタプス・ポルジンギスとクリスチャン・ウッドを欠いていたが、ルカ・ドンチッチが開幕から9試合連続30得点超えと手の付けられない絶好調ぶり。それでもマジックはドンチッチをフィールドゴール29本中9本成功の24得点に抑え込むディフェンスで勝機をつかんだ。

第4クォーター残り7分の時点でマジックは82-81と1点リード。このディフェンスの局面で、ボールを持つスペンサー・ディンウィディーに対し、距離を詰めてボールを奪いに行くのではなく、味方との良い距離感を保ってじわりじわりとプレッシャーを掛け、最後はドワイト・パウエルに得点期待値の低いミドルジャンパーを打たせる。決して派手ではないチームディフェンスだが、マジックのファンはこれがゲームプランであることを理解して歓声を送る。これを受けてマジックの選手たちは集中力を一段と増し、得点が決まらなくても動じることなく次のディフェンスに向かい、良いリズムに乗っていった。

残り4分半、ルカ・ドンチッチに対して素晴らしいディフェンスを見せたのはチュマ・オキキだ。スクリーンとパスで揺さぶられてもドンチッチに食らい付いたオキキは、クロスオーバーで攻めるタイミングをうかがうドンチッチから長い腕を伸ばしてボールを突っつく。そのままボールはラインを割ってターンオーバーにはならなかったが、ドンチッチが快適にプレーできていなかったのは明らかだ。

マジックベンチの目の前で行われたこのプレーを、ベンチにいる選手やコーチングスタッフを含む全員が称え、オキキを助け起こす。観客も大興奮し、ディフェンスで耐えて耐えて小さな優位を積み重ねる彼らを後押しした。

マジックのディフェンスは無理にボールを奪いに行かず、ズレを作られそうになっても素早く修正し、相手をタフショットに追い込むもの。自分たちのシュートもあまり決まらなかったが、残り時間がなくなるにつれて焦るマブスからフリースローを獲得し、少しずつリードを広げていく。

ドンチッチが最後にコートに戻ったのが残り5分43秒、そこからマブスが奪った得点はわずか4。ドンチッチが第4クォーター最初の得点を挙げたのは残り50秒のところ。だが、その時点で94-87と勝負は決まっていた。87-94で試合が終わった後、ドンチッチは「どんなチームにも負ける可能性はある。僕のプレーもひどかったし、チームとしても良いプレーができていなかった」と語っている。

そのドンチッチを徹底したマークで抑えたオキキはこう語る。「この試合にあたって僕らは彼をどう止めるかに集中してきた。僕は彼に対してどう守るか、具体的なプランを持って臨んだ。オフェンスでもディフェンスでも、一つのプレーも簡単にはやらせない。そういうゲームプランだったんだ」

そしてオキキは、ハリケーン『ニコル』がフロリダに迫り、試合開始時間が前倒しになる状況で会場に足を運び、自分たちのスタイルを理解して応援してくれるファンへの感謝も忘れなかった。「みんないつも大きな熱意を見せてくれるけど、ここ数試合でもらえるエネルギーは本当にすごい。ファンの皆も僕らと一緒に戦い、勝ったものだと感じているよ」

この試合、マジックはパオロ・バンケロが足首を痛めて欠場しており、得点面でのパンチ不足は否めなかったが、だからこそディフェンスに集中できたと言える。どの選手もサイズがあり、タフに戦える特徴は、こういったディフェンス勝負でこそ生きる。マジックの指揮官ジャマール・モズリーは勝因を「失敗しても下を向かず、それを乗り越えて次のプレーに向かう『気持ちの回復力』だ。うつむいていたんじゃミスを重ねるだけだから、次のポゼッションで取り返すんだと自分を奮い立たせなければいけない。今日は全員がそうやってプレーしていた」と語る。これをチームとしてモノにできれば、マジックとしては大きなステップアップになるはずだ。