ジャック・ボーン

セルティックスをNBAファイナルに導いたユドカは外れる

指揮官スティーブ・ナッシュが去ったネッツは、その後の4試合で暫定で指揮を執っていたジャック・ボーンを正式なヘッドコーチにすることを発表した。

ボーンはロサンゼルス出身の47歳。現役時代はポイントガードで、1997年のNBAドラフト1巡目27位指名を受けてジャズに加入した。2004年から2年間はニュージャージーに本拠を置いた時代のネッツでプレーしている。現役最後に所属したスパーズで2007年にNBA優勝を経験し、2009年に現役を引退した。

引退するとすぐにスパーズのグレッグ・ポポビッチの下でアシスタントコーチとなり、マジックのヘッドコーチを経て2016年にケニー・アトキンソンのアシスタントコーチとしてネッツに来て、これで7年目になる。2019-20シーズンにアトキンソンが解任された時にも暫定ヘッドコーチを務め、『バブル』でチームを率いた。

ナッシュが去ってから今回の決定に至るまで、ボーンと同じくネッツでアシスタントコーチを務めたイメイ・ユドカが後任ヘッドコーチ候補に浮上していた。ネッツをよく知り、昨シーズンにセルティックスを率いてNBAファイナルまで進んだユドカだが、今シーズン開幕前に『チーム内の女性スタッフと不適切な関係を持っていた』ことを理由に出場停止となっていた。セルティックスは他チームがユドカと交渉することを認め、契約する場合は補填も要求しないつもりだったと『New York Times』は伝えている。しかし、モラルの問題で処分を受けた人物をコーチとして採用する是非が問われるのは避けられなかった。

今オフにはケビン・デュラントがトレード要求をして、後に撤回。開幕からわずか7試合でナッシュがチームを去ったかと思えば、カイリー・アービングが反ユダヤ主義とも取られる言動で出場停止処分を科されるなど、とにかくトラブル続き。昨シーズンに大きな結果を出したユドカの手腕は魅力的かもしれないが、これ以上の騒動を避ける判断だった。

ショーン・マークスGMはリリースの中でボーンについて「選手に責任を持たせてベストを引き出し、団結力のあるバスケを展開できるコーチ」と説明している。

ボーンと同じく2016年にネッツに加入した古株のジョー・ハリスは、今回のヘッドコーチ人事が発表される前の取材対応の中で「JV(ボーン)は素晴らしいコーチだ。多くの経験をする中で自分のアプローチを調整してきた。選手に物事をはっきり理解させるために、たくさん会話をする」と語っている。

今シーズンからネッツでプレーし、開幕から『3&D』として結果を出している渡邊雄太は、ボーンが暫定ヘッドコーチになってからパフォーマンスをさらに上げている。チーム事情でプレータイムが伸びた面もあるが、ボーンが指揮を執るようになった途端に2試合連続で2桁得点を挙げるなど、明確な結果を残している。自分を信頼してくれるヘッドコーチの肩書から『暫定』が外れたことは、今の好調を続ける後押しになるはずだ。現地7日のマーベリックス戦で痛めた足首は軽傷で済んだようだ。

いまだアービングは出場停止で、ベン・シモンズは試合に出ておらず、ロイス・オニールや渡邊といった新戦力の活躍はあっても4勝7敗と出遅れている。まだまだ問題は山積みのネッツだが、今回のヘッドコーチ人事によりようやく正しい方向に踏み出す準備ができたようだ。